窪田正孝が明かす、『エール』モデル・古関裕而とのシンクロ 「“愛情”を皆さんに届ける半年間に」

窪田正孝、『エール』に込めた思い

 NHKの連続テレビ小説第102作『エール』が、3月30日よりスタートする。本作では、「栄冠は君に輝く」「長崎の鐘」など、現在まで歌い継がれる数々の名曲を残した作曲家・古関裕而と、その妻・金子をモデルに、音楽とともに生きた夫婦の物語が紡がれていく。

 土曜は1週間の振り返り放送や、4K撮影による制作と、連続テレビ小説の中でも革新的な試みが行われる本作において、主人公・古山裕一として物語を背負っていくのが、これが3度目の朝ドラ出演となる窪田正孝だ。“帰ってきた”朝ドラに、窪田はどんな思いで臨んだのか。放送を前にじっくりと話を聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

「自分の“心”が音楽には反映される」

ーー『ゲゲゲの女房』『花子とアン』に続いて3度目の朝ドラ出演であり、しかも今回は主演となります。

窪田正孝(以下、窪田):“主役だから”という考え方はまったくありません。僕がどうこうというよりも、裕一の妻である音さんを演じる(二階堂)ふみちゃんが、輝ける瞬間をたくさん作ることができたらいいなと思い、現場でもキャスト、スタッフの皆さんと一丸になって頑張っています。“主演”としての違いを強いてあげるとすれば、家族や親戚の皆が、「朝ドラ主演」をすごく喜んでくれたことです。喜んでくれた身内の皆を、演技を通してもっと喜ばせたいと思いましたし、それができなければたくさんの視聴者の方々にも喜んでいただけないなと。老若男女、日本全国の皆さんが観る作品に出演させていただけることを、改めてうれしく思っています。

ーーさまざまな作品に出演されている窪田さんですが、約1年間の撮影を行う朝ドラは特別なものがありますか?

窪田:ここまで役と長く向き合える作品に参加できることはなかなかありません。ひとつの役をとことん掘り下げていくことができるのは、朝ドラの一番の難しさであり楽しさです。朝ドラの主演を務めた方にお話を聞いたとき、「朝ドラを経験すると他の現場はどれも楽に感じると思う」とおっしゃっていたんです。まだ途中ではありますが、その気持ちはすごくわかります。毎日撮影を重ねていると、「役を作ろう」と考えるのではなく、カメラの前に立つだけで自然と役に入り込んでいる感覚になるんです。半年後、どんな思いを抱いているかわからないですが、ものすごい達成感に満ちているのではないかと思います。また、土日は基本的に撮影がお休みで、月曜日から金曜日まで通ってスタジオで撮影、たまにロケ撮影もありますが、こんなに規則正しいスケジュールは、他の作品ではなかなかありません。セットが変わるごとに新しい登場人物と出会い、少しずつ時代を重ねていく。新たな刺激が常にあり、本当に毎日が楽しいです。

ーー裕一を演じる上で、モデルとなった古関裕而をどんな人物と捉えていますか?

窪田:資料を読んでも、いろんな逸話を聞いても、古関さんを悪く言う人は誰もいないんです。誰一人として古関さんには“敵”がいない。多くの人が、媚びを売る、まではいかなくても、場の空気を読んで取り繕ったり、自分を誤魔化すことは、円滑な人間関係を送る上ではあると思うんです。でも、古関さんはそういったものが一切なく、自分に嘘を付くことがない。だから、誰にも憎しみを抱かない。負の感情を抱いた相手にもその感情が愛情に変わっていたりする。あくまで僕が演じるのは裕一であり、古関さん自身ではないのですが、裕一を演じていると不思議と僕自身もその感覚にシンクロしていっています。誰もが大好きという点において、古関さんの人柄と、生み出した楽曲は一致していると感じます。本当に音楽が遺伝子に組み込まれていた方なんだなと思います。

ーー音楽家を演じる上で習得しないといけないものも多かったと思います。

窪田:ハーモニカ、指揮、譜面の書き方、オルガン……音楽家として学ばなくてはいけないものが本当に多いです。指導してくださる先生方が回転寿司のようにどんどん変わっていくような感覚でした(笑)。一人でハーモニカを吹くシーンでは、実際に演奏した音を使っているので、緊張……とはまた違う、なんとも言えない感覚がありました。裕一が人生のどん底の中でハーモニカを吹くシーンがあるのですが、音にならない音になってしまい、“音楽”としては成立していないものになってしまったんです。でも、「気持ちを表すという意味では成立している」と演出の吉田(照幸)監督からOKをいただいて。ミュージシャン、音楽家でもない自分が軽はずみに言っていいことではないかもしれないのですが、誰かを思って吹く、誰かを思って指揮をすると音は本当に変わるんだなと撮影を通して実感しています。自分の心が、こんなにも音に反映されるとは思ってもいませんでした。演奏シーンのほか、音楽に向き合い“無”になって作曲をしている瞬間も、映像的にも挑戦したものになっているので注目していただけたらと思います。

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