声優アワード受賞の花江夏樹 『鬼滅の刃』『ランウェイで笑って』にみる“主人公力”

 今年で14回目の開催となる声優アワードにて、主演男性声優賞を獲得した花江夏樹。今やその声を聴かない時はないと言えるほどに、幅広い活動を見せている。同じく声優アワードでシナジー賞を獲得した大人気アニメ『鬼滅の刃』では主人公の竈門炭治郎を演じ、幅広い層のアニメファンから支持を集めた。声優を志してから10年目の快挙である。炭次郎と、受賞時に主演を務めていた『ランウェイで笑って』の都村育人の2人のキャラクターから、花江の人気の理由に迫る。

花江夏樹

 竈門炭治郎は叫びの演技が特に印象的なキャラクターだ。家族と暮らす平和な日常を、突然現れた鬼によって壊され、妹・禰豆子も命こそ助かったものの、鬼と化してしまった。彼女を人間に戻すため、鬼殺隊と呼ばれる組織に所属している。慈悲深さと、目的のために曲がらない実直さを合わせ持つこの役は、花江の演技の幅広さを一役で楽しめると言っていいだろう。

 命がけの戦闘シーンでは、文字では表すことのできない叫び声や呼吸音といった音の表現が多用される。日常的なシーンでは温厚で柔らかな兄の面を見せる優しい声であるが、宿敵と出会った時は、怒りを滲ませた、迫力のある絶叫が際立つ。『Fate/Apocrypha』のジークや、『東京喰種トーキョーグール』の金木研といった戦いの日々の中で生きるキャラクターに共通して見られる特徴である。

 『鬼滅の刃』をはじめ、花江の代表作としてあげられる作品はファンタジー世界を舞台にしたものも多いが、同様に多くみられるのが、平和な学生生活を送る学生役だ。『ランウェイで笑って』の都村育人も、家族思いという特徴は炭次郎と共通している。母子家庭で育った育人は、母と妹たちの幸せのために自らの夢から身を引こうとしていた。そのため、序盤では控えめな性格であった。だが、様々な出会いと天性の才、そして努力により培ってきた実力で夢に向かい始めたとき、大きな変化を見せる。

 ヒロイン・千雪が本当に同一人物なのかと驚くほどに、激しい自己主張ができる青年へと成長するのだ。この作品で花江は、クラスに一人は居そうな等身大の高校生でありながら、ファッション業界で専門用語を使いこなしながら才能を開花させる少年という二面性のある役柄を丁寧に演じていた。『四月は君の嘘』の有馬公生や、『DAYS』の成神蹴児も、第一印象は大人しく見えるものの、内に情熱を秘めていた、花江のはまり役である。

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