今期、もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2020年冬の注目作ベスト5

2020年冬ドラマ注目作ベスト5

 暖冬で、雪景色こそ都内では珍しくなってしまったが、寒いことには変わりない2020年1月も最終日。そんな寒さから家に帰り、こたつでみかんを食べながら、ぬくぬくと楽しめるドラマが朝から深夜までいくつも放送されている。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、冬ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

 自分で書いていて驚いたのだが、ベスト5が全て深夜ドラマとなった。もちろん、プライムタイムのドラマにも楽しめる作品はあるのだが、過去にヒットした作品のパッチワークであったり、演出が説明過多で観てられないものが多く、全体的に保守的。それは医療ドラマの供給過剰という現状に強く現れている。

 対して深夜ドラマは、物語の規模こそ狭くてどれもこぢんまりとしているが、すでに監督、脚本家、出演俳優の座組は、プライムタイムのドラマと比べても遜色ないものとなっており、雑多でバラバラゆえの勢いも感じる。

 悩んだのはNHKの土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』をどう評価するか? 阪神淡路大震災を精神科医の視点から描いたシリアスな社会派ドラマはNHKでしか作れない硬派な作品で、存在意義は高く評価するが、こういう題材だからこそ、エンタメに寄せて描いた方がよかったのではないかと感じた。また、NHKではよるドラ(これも深夜ドラマだが)の『伝説のお母さん』も放送前なので除外しているが、意欲作となるのではないかと期待している。

1.コタキ兄弟と四苦八苦(テレビ東京系)

(c)「コタキ兄弟と四苦八苦」製作委員会

 一位の『コタキ兄弟と四苦八苦』は野木亜紀子脚本、山下敦弘監督という座組もあって完成度の高いオリジナルドラマとなっている。忙しい方は、これだけでも観てほしい。

 古舘寛治と滝藤賢一が演じる無職のおじさん兄弟が「レンタルおやじ」として様々な仕事をする姿が描かれるのだが、野木が描いてきた女性の生きづらさと、山下が描いてきた無職のダメ男が醸し出すユートピア感が時に融合し時に衝突する姿は見応えあり。さながら令和版『傷だらけの天使』(日本テレビ系)とでも言うようなドラマで、東京オリンピックを控えた忙しない世の中にうんざりしている人にとってはアジール(避難所)のような作品。小規模ゆえに切実な優しい作品で、深夜ドラマで作る意義を、作り手が的確に理解しているドラマだと言える。

2.やめるときも、すこやかなるときも(日本テレビ系)

(c)NTV・J Storm

 2位の『やめるときも、すこやかなるときも』は、奈緒が演じるヒロイン・桜子の、ねっとりと絡みつくような辛気臭さにやられてしまった。『あなたの番です』(日本テレビ系)の時はやりすぎだと思ったが、人が内側に秘めているジメジメとした感情を演じさせると奈緒は最高である。原作は窪美澄の小説で、藤ヶ谷太輔が演じる喪失感を抱えた男性と結婚を焦る女性のラブストーリーなのだが、今のところ、奈緒がヤバいという感想に尽きる。

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