『シャーロック』特別編、続編への期待残る衝撃の幕切れ 岩田剛典の視点から「その後」を描く
「人は心臓が止まった時に死んだと判断される。亡骸がなければ医学的にも死は認められない」。自分の息子が自死したことを受け入れられなかった母親が、息子の死体を隠していたという事件が描かれた第5話の冒頭だっただろうか、若宮(岩田剛典)がモノローグで紡いだ言葉だ。12月23日に放送された『シャーロック』(フジテレビ系)の特別編は、姿を消した獅子雄(ディーン・フジオカ)を待ち続ける若宮の姿を通した総集編であり、すべての事件のアフターストーリーが描かれることとなった。
守谷(大西信満)とともに海に沈んだきり、獅子雄の行方がわからなくなってから1週間。警察による捜索も打ち切られそうになっている中、若宮の前に門司かれん(木南晴夏)というジャーナリストが現れる。獅子雄の功績を残すために話を聞かせてほしいという彼女に抵抗感を示す若宮だったが、獅子雄の消息を知るための手掛かりになると感じ、力を貸すことに。そして、これまで獅子雄が解決してきた事件の関係者の“思い”を知るために、門司は犯人たちに、若宮は関係者たちに会いにいくことに。
「特別編」と銘打たれたストーリーということもあって、第1話の犯人から順を追って登場していき(もちろん後半の事件に直接的に関わってくる第3話は市川利枝子が後から登場し、第8話からは登場がなかったが)、それぞれの人物の事件以降の心情の変化があらわになってくるものの、一向に獅子雄の行方の手掛かりは見つからない。そんな中で、木暮(山田真歩)の言葉を受けて門司に疑惑の念を向ける若宮。そこで語られた門司と獅子雄の接点。かつて夫のDVに悩まされたという門司が、義母と共謀して偽装殺人を企てて自分が死んだことにして夫から逃れたものの、義母が警察に追われることとなり、それを救ってくれたのが獅子雄だったと。
なるほど「特別編」でも“語られざる事件”は健在というわけだ。この一連のくだりから連想されるのは『バスカヴィル家の犬』の中に登場した「モンパンシエ夫人の継娘カレール殺害疑惑」。“門司かれん”という名前も、この“語られざる事件”の固有名詞から引用しているというわけだ。それだけではない。物語のラスト、若宮が獅子雄を探すことを諦めてから3年の月日が流れ、自らが江藤(佐々木蔵之介)ら警察の捜査に協力をするようになった際(この展開も『最後の事件』から3年後にワトソンとホームズが再会する『空き家の冒険』を想起させるが)の、“偽洗濯屋”と“姉妹”のキーワードからは『ボール箱』が想起できよう。最後の最後まで、というよりむしろエキシビション的な意味合いの強いこの特別編にいたるまで、徹底して“アントールド・ストーリーズ”を貫いてくるというのは実に面白い。