年末企画番外編:ナマニクの「2019年 年間ベストホラー映画TOP10」 昨年に引き続き豊作の1年に

ナマニクの「2019年ホラー映画TOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、番外編として2019年に日本で上映された(Netflixオリジナル映画含む)洋邦のホラー作品から、ZINE『残酷ホラー映画批評誌 Filthy』発行人である、ホラー映画に造詣深いライター・ナマニクが独自の観点で10本をセレクト。(編集部)

1.『CLIMAX クライマックス』
2.『ミッドサマー』(第32回東京国際映画祭にて上映)
3.『ザ・マミー』
4.『ゴーストランドの惨劇』
5.『ザ・バニシング-消失-』
6.『ハイ・ライフ』
7.『セーラ 少女のめざめ』
8.『ハッピー・デス・デイ』、『ハッピー・デス・デイ 2U』
9.『ハウス・ジャック・ビルト』
10.『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

 エンタメからマニアックなインディペンデント、定番のスプラッター、異国ダークファンタジー、リブートにリバイバルまで、昨年に引き続き今年もホラーは豊作の年だった。ベスト10を選べといわれても困るぐらいだ。

 そこで今回は、見ていて楽しい映画を極力排除し、本来、ホラー映画が持つ「暗くて、怖くて、厭な」タイトルを中心に選出を行った。少しヒネたように感じられるかもしれないが、読者皆様のホラーライフ充実の手助けとなれれば嬉しい。

10.『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』

『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 本年の娯楽ホラーの代表的作品。169分の長尺にも拘わらず、全く退屈させない質実剛健な作りは見事。ペニーワイズの強烈なビジュアルは総登場時間が10分程度であるにも拘わらず、全ての観客にピエロ恐怖症のトラウマを植え付けた。

 御存知の通り、スティーブン・キング原作の『IT』は元々2部構成。前作が幼少編、本作が大人編に当たる。最初、筆者は本作の出来に期待していなかった。というのは、中学生のときに観たTV映画版、それと同時に読んだ原作の”大人編”に全く面白味が感じられなかったからだ。ところが自分が歳を取った今なら、本作から“背負うモノがある”苦しみ、悲しさをヒシヒシと感じることができる。もはやホラーを通り越して、大河ドラマである。面白い面白くないというよりも「大人にならないと分からないってこと、ホントにあるんだなぁ」と妙に納得させられてしまった。悔しい、悔しいぞ!

9.『ハウス・ジャック・ビルト』

『ハウス・ジャック・ビルト』(c)2018 ZENTROPA ENTERTAINMENTS31,ZENTROPA SWEDEN,SLOT MACHINE,ZENTROPA FRANCE,ZENTROPA KOLN

 精密にやるときもあれば運任せや雑になるところもあるし、思っていたものと違うものができることがある……。家を建てることと、映画を創ることと殺人を同じアートとして扱い、芸術の見方を定義している。無用に暴力性を高めて“気が狂っている”ように見えるが、絵画や古典小説はもちろん、犯罪史などあらゆる知識をトコトン詰め込んだ、悪趣味なホラー哲学。

8.『ハッピー・デス・デイ』、『ハッピー・デス・デイ 2U』

『ハッピー・デス・デイ 2U』(c)Universal Pictures

 “ただ殺すだけ”のスラッシャー映画では満足できなくなったホラージャンキーの清涼剤として話題になった作品。1作目の『ハッピー・デス・デイ』は2017年製作の古い映画だが、本国で今年続編にあたる『ハッピー・デス・デイ 2U』が製作され、バーターでようやく日本公開に漕ぎ着けた。

 誕生日の夜に殺されては、朝に巻き戻されてしまうタイムループに陥ってしまった主人公が“いかに殺されないか?”を試行錯誤しながらループ脱出を試みるストーリーは、ホラーファン以外にも多くの人々に受け入れられ、期間限定上映であったにも拘らず期間延長となった。「ホラー映画はちょっと苦手で……」という方に是非観てもらいたい連作。

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