ドラマを脱構築するテレビ東京深夜枠の挑戦 視聴スタイルの多様化で生まれた新たな可能性
『ひとりキャンプ~』の大和健太郎プロデューサーは、深夜枠で『山田孝之の東京都北区赤羽』、『その「おこだわり」、私にもくれよ!!』などのモキュメンタリー・ドラマに携わり、バーチャルYouTuberをキャスティングした『四月一日さん家の』を手掛けるなど、同局のチャレンジングな試みを主導してきた一人である。また、ドラマ25では2019年7月期に各地のサウナをめぐる『サ道』が放送され、愛好家の世界を描きながら週末の深夜にまったりとした没入感を誘っていた。『ひとりキャンプ~』を、こういった趣味系ドラマやフェイク・ドキュメンタリーの系譜に連なる作品として位置づけることも可能だろう。
『知らない人んち』、『ひとりキャンプ~』は外部からハプニング性を取り込む試みとして理解できるが、古くからある即興劇はその極致ともいえる。系列局のテレビ大阪による『抱かれたい12人の女たち』では、山本耕史扮するバーのマスターが訪れる女優と1対1の即興芝居を繰り広げる。第一線で活躍する女優たち(誰が来店するかは知らされない)があの手この手でマスターを誘惑するが、「客」による事前の仕込みや予想外のアドリブが飛び出すなど硬軟自在な会話劇がスリリング。自由度の高い設定は、舞台をそのまま撮影するというテレビドラマの原点に戻ったような印象も受ける。撮影後の出演者による振り返りもあり、ドラマの舞台裏を楽しむ姿勢は、SNSでのリアルタイム実況や動画サイトのスピンオフが定着した現在の流れとも一致する。
深夜枠で行われるこれらの挑戦はドラマに関する既成概念を覆し、新しい楽しみ方の可能性を提示するものだ。テレビドラマを再定義するような試みの中から新しい潮流が出てくることを期待したい。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
ドラマ25『ひとりキャンプで食って寝る』
毎週金曜深夜0時52分~1時23分、テレビ東京・テレビ大阪ほかにて放送
出演:三浦貴大、夏帆、宇野祥平、北香那、黒川芽以、渋川清彦、田口トモロヲ、仲本工事、福士誠治、朝倉あき、川瀬陽太、中島歩、坂東龍汰、柳英里紗、山下リオ
演出:冨永昌敬、横浜聡子
脚本:冨永昌敬、保坂大輔、飯塚花笑
音楽:荘子it(Dos Monos)
主題歌:Yogee New Waves「to the moon」
(Colourful Records / ビクターエンタテインメント)
プロデューサー:大和健太郎、滝山直史、横山蘭平
制作:テレビ東京/東京テアトル
製作著作:「ひとりキャンプで食って寝る」製作委員会
(c)「ひとりキャンプで食って寝る」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/hitoricamp/