『G線上のあなたと私』桜井ユキに学ぶ素直な気持ち “ほっとけない“存在になりたい波瑠
「ほっとけないって何? ほっとけないって、俺も。これ……なんなの」
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)第6話のタイトルは、“ほっとけないって愛ですか“。「ほっとけない」という普段何気なく使っている言葉の真意を、今一度問いかけてくる。
大人のバイオリン教室で出会い、定期的に顔を合わせるだけの関係だった、也映子(波瑠)と理人(中川大志)、そして幸恵(松下由樹)。だが、気づけば年齢が違うから話せること、環境が違うから温かく見守れること、性別が違うから新しい視点を教えてもらえる、そんな居心地のいい場所に。いつしか、教室という空間を超えて3人の支えになっていく。
一方で親しくなるほどに、その距離感のとり方に戸惑いを覚える場面も増えてきた。特に、独身の也映子と理人は、お互いの恋愛事情にも深く入り込むように。也映子は親が倒れたという元婚約者の智史(森岡龍)を、理人は病を患う兄の元婚約者・眞於(桜井ユキ)を、それぞれ「ほっとけない」と接点を手放せずにいた。さらには、想いを寄せてくる結愛(小西はる)に対しても、煮えきれない態度を取る理人。
お互いが一定の距離を取っていたときには聞けた恋愛相談も、なんだか穏やかに耳を傾けることができない。もはや、教室ではなく自発的に会い続けている、この関係をなんと呼べば良いのかわからない。そうなると、どの立場で話を聞いたり、アドバイスをすればいいのかも……。
理人は人生経験の少なさゆえか、苦しい立場になるほど自分の気持ちと裏腹な態度を取ってしまう。売り言葉に買い言葉で「自分に何もないからって、俺と北河さんに執着するのいい加減止めてもらえますか」と言い放ち、深く也映子を傷つける。
也映子も理人よりも少しだけ長く生きているものの、自分自身の幸せの軸が見えていない。だからこそ傷ついても、案外簡単に立ち直って見えてしまう。自分にとって何が大切なことなのかが明確であるほど、それを突かれたときに人は立ち直れないほど深く傷つくからだ。だが、仕事も恋愛も手放した今の也映子にとって、理人と幸恵の関係が最も大切なことであることは確か。理人の言葉に胸を痛める。
そんなふたりに、やきもきしながらも「いいなぁ」と見守るのは幸恵。その模索や衝突こそが、若さであり、誰かと正面きってぶつかることが大人になるほど難しいものなのだと痛感しているのだろう。