『G線上のあなたと私』桜井ユキに学ぶ素直な気持ち “ほっとけない“存在になりたい波瑠
也映子がモヤモヤを抱えながら、ひとりバイオリン教室に向かうと、そこには生徒や同僚からプレゼント攻撃を受ける真於がいた。28歳の誕生日、母親にしか祝ってもらえなかった自分と、理人からバースデーメッセージをもらう眞於。その違いを見て卑屈になった也映子はその思いをつい眞於にぶつける。
「眞於先生は一生、周りの人から“ほっとけない“って言われる人種です。良いですよね、“ほっとけない“って。めちゃくちゃ言われたいワードですよ、だって、それ愛ですもんね」「ほっとけない」と言われるほど気にかけてもらえず、「ほっといても大丈夫」と言われるほどキャラも濃くない、そんな“普通“な自分を見つめ直し「誰からも気にしてもらえないってキツイです」とつぶやく也映子。
そんな也映子に、眞於は「だったら、そう言えばいいじゃないですか」とバッサリ。「気にしてもらいたいなら、待ってるだけじゃなくて、誰かのスペシャルになる努力をしなきゃダメじゃないですか? 自分からは何もアピールしないのに、これでも弱ってる。さっしてくれって言う人のほうがワガママな気がしますけど」。
きっと、この言葉の裏側には、眞於の努力があるのだろう。笑顔で愛想よく振る舞うのも、少し高めのトーンでリアクションをしてみせたり、きっと彼女の努力。時折、元婚約者の侑人(鈴木伸之)や理人に見せる毅然とした態度を見れば、元来の彼女の性格はもっとシビアなものなのかもしれない。
「愛されたい」「気にかけてもらいたい」「見つけてもらいたい」そんな理由から私たちは、ダイエットをしたり、髪型や服装を変えたりと、多くの人が自分自身を磨こうと努力している。周囲から大事に扱われたいと思うのならば、きっと外見と同じように、性格も努力してバージョンアップすることができるのではないか。
もちろん、もともとスタイルが良かったり、髪質や肌質が綺麗だったり、センスが良かったり……と、生まれ持った才能がそれぞれあるように、生まれながら多くの人から好かれる性格の人もいる。ただそれを「いいですよね」「何が違うのかな」と卑屈になっているだけでは何も始まらないと、眞於は言いたかったのだろう。本当にそうなりたいのなら、自分から殻を破るしかない。もしかしたら、そこには病について素直に侑人に言えなかった自分への戒めも含まれているのかもしれない。
劣等感にさいなまれたときこそ、理想とする自分が見えるチャンス。きっと也映子が呟いた「“ほっとけない“と言われたい」は、いろんな人からそう言われたいのではなく、理人に“ほっとかれない“存在になりたい=“愛されたい“ということなのだろう。
誕生日を覚えていてくれる人、松ヤニがもうすぐ無くなるのを気にかけてくれる人、泣き虫な自分に付き合ってくれる人……。だが、まだ也映子はそれに気づいてなさそうだ。『Someone to Watch Over Me』(わたしを見ていてくれる人)は誰でもいいわけじゃない。也映子の本当に欲しいものが、素直な気持ちが、ハッキリと見えてきそうだ。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/