『けいおん!』『バンドリ!』『うた☆プリ』……アニメーションにおける演奏表現の進化を辿る

アニメにおける演奏表現の進化を辿る

CG技術が音楽アニメにもたらしたもの

 近年のCG技術の発達によって、音楽アニメの演奏シーンにも新しい波がもたらされた。モーションキャプチャを用いて、3DCGで演奏やダンスシーンを作る手法は、日本のアニメでは一般的になっている。

 『アイカツ!』シリーズや『ラブライブ!』などのアイドルアニメに多く用いられており、『プリパラ』シリーズでは、声のキャストを務める声優ユニット「i☆Ris」自身がモーションアクターを担当するという、現実の役者とアニメキャラの融合とも言えるような試みも行われ、ダンス歌唱シーンの実在感を高めている。

i☆Ris×テレビアニメ「アイドルタイムプリパラ」スペシャルムービー

 CGによる音楽アニメで特筆すべき存在は『ラブライブ!』の監督として知られる京極尚彦だろう。京極氏は『ラブライブ!』TVシリーズの監督を務める前から、同作のミュージックビデオを手掛けており、『プリティーリズム・オーロラドリーム』や『KING OF PRISM』のプリズムショーの演出を担当するなど、CGアニメによる音楽アニメの製作を実践してきた人だ。手描き作画とCGの使い分けが上手いことが特徴として上げられるが、楽曲を徹底的に聞き込み、その楽曲が表現しているものがなんなのかを深く読み込んだ上で音楽シーンを作っていることが氏の演出の素晴らしさだろう。

「歌詞のとおりには演出しないようにしていて。というのも、100回以上リピートしていると、“音楽の向こう側”が見えてくるんですよ。表面上の歌詞やメロディとは異なる別の主題や、音楽の側が付けてほしがっている映像がだんだんと見えてくるんです」(『アニメ製作者たちの方法』高瀬康司編、P164、フィルムアート社刊)

 上記引用した『アニメ製作者たちの方法』のインタビューで、京極監督は『Snow halation』を例に取り、「歌詞は冬の切ない気持ちを歌ったラブソングだが、“音楽の向こう側”に新たなスタートに対する希望を感じて、切なさだけでなく幸せな気持ちも表現」しようと務めたと語っている。

「ラブライブ!」2ndシングル「Snow halation」/μ's ショートサイズPV

 モーションキャプチャとCGは、ダンス歌唱シーンだけでなく、バンドの演奏シーンでも用いられている。その代表的な例は『バンドリ!』シリーズだろう。本作はスマートフォン向けゲームを中心とするメディアミックス作品だが、ゲーム内でミュージックビデオが観ることができる。モーションキャプチャから起こされたリアルな動きとセルルックCGの芝居が高いレベルで融合している見事な作品だ。

Afterglow 「ツナグ、ソラモヨウ」アニメMV(フルサイズver )

 『バンドリ!』シリーズはこれまでに2シーズンのTVアニメが放送されているが、2ndシーズンはMVと同じくフル3DCGで製作された。手描きアニメ主体の1stシーズンでは演奏シーン自体が少なかったのだが、2ndシーズンでは毎週、本格的な演奏シーンを描き、その実在感でアニメファンを唸らせた。アニメ制作を担当したサンジゲンの技術の高さもあるが、演奏に魂を乗せるためのモーションアクターの芝居をこまかにつけていく地道な作業のたまものだろう。

 モーションアクターの動き撮りの取材で(『BanG Dream! 3rd Season』モーションキャプチャ撮影現場に潜入 監督・アクターにも直撃)、監督の柿本広大氏は、「(モーション)アクターさんの演技を活かし尽くす」ことを前提にしていると語っている。モーションアクターにもキャラクターの性格や個性を理解してもらい、それを演奏に反映させているのだ。モーションキャプチャにおいても、実際の演奏者の役作りから始める点はライブアクションと同様なのである。

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