「ジョーカーは“混乱”や“無秩序”を体現」 騒ぎ続くアメリカでJ・フェニックスや監督らが心中明かす

『ジョーカー』J・フェニックスや監督らが語る

 今年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した話題作『ジョーカー』がニューヨーク映画祭で上映され、同作について主演ホアキン・フェニックス、トッド・フィリップス監督、製作者エマ・ティリンジャー・コスコフ、衣装デザイン、マーク・ブリッジス、撮影監督ローレンス・シャーらが、ニューヨークのリンカーン・センターにあるアリス・タリー・ホールで、その想いを語った。

 体の弱い母親と2人で細々と暮らしていたコメディアンを夢みる心優しい男アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)は、大道芸人をしながら日銭を稼いでいたが、ある日、行政の支援を打ち切られる。彼は精神疾患を患っており、社会から疎外され、狂気の怪物、ジョーカーへと変貌を遂げていく。

 公開前から、内容の過激さが人々に与える影響を不安視する声があがり、2012年には『ダークナイト・ライジング』の上映中に銃乱射事件があったことで、『ジョーカー』のニューヨーク映画祭での上映の際にも、警察が劇場の周りで警備していた。そんな過剰なまでの反応についてトッド監督は「今作はかなり複雑な映画だ。まさか、これほどまでに世界レベルで反応してくれるとは、正直想像さえできなかった。この映画が、人々の会話に拍車をかけたり、議論を呼んだりすることは興味深いし、良いことだ。僕自身は、映画製作は(アーティストの)発言手段だと思っているから、それ自体を語り合うことは良いが、映画を鑑賞した方が、さらにその会話の役に立つだろう」と明かし、公開前に行われたこのQ&Aで、未だ鑑賞していない一般の客が、今作を批判していることに関して一石を投じた。

 ホアキンは、撮影に臨む前にあることを行ったそうだ。「実は、母親と姉妹に脚本を見せたんだ。家族で読んで、その内容について多くを語り合った。その中には、(ジョーカーを描く上で)簡単な答えはなく、問題提起するような質問が沢山あった。だからこそ、僕らは映画の内容について考えさせられた。僕自身は、ある程度このような反応を受けることは事前に予測できていた。ただ脚本は、素晴らしい内容とキャラクターで、僕が否定する理由はなかった。だが、僕が映画に出演するときは、何らかの過程が必要なんだ」と答えた通り、過去にホアキンは、マーベルのハルク役やドクター・ストレンジ役をオファーされたが断っている。

 若い頃に、アイヴァン・ライトマンやジョン・ランディスなどのコメディ作品を観て育ち、それらに製作意欲を掻き立てられたと語るトッド監督。これまで、映画『ハングオーバー!』シリーズなど、コメディをメインに手がけてきたが、20代の時に出会った作品に影響を受けたそうだ。「シドニー・ルメット監督の『狼たちの午後』、『ネットワーク』、マーティン・スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』、『タクシー ドライバー』、ミロシュ・フォアマン監督の『カッコーの巣の上で』などが、僕の人生を変えてくれたんだ」。そんなトッド監督が新作に選んだのが、これらの映画を反映させた80年代のゴッサムシティを舞台にした『ジョーカー』だ。

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