「支援がなければ、実現できなかった」 朝ドラ100作目『なつぞら』を支えた北海道・十勝の協力
残すところ1話となったNHKの連続テレビ小説『なつぞら』。半年に渡って描かれてきたのは、戦後の北海道の大自然と、日本アニメの草創期を舞台に、まっすぐに生きたヒロイン・なつの夢と冒険の物語だ。
本作は、朝ドラ100作目として、製作陣の力が注がれた作品でもあった。ドラマ内のアニメーション時代考証を小田部羊一が担当し、主演の広瀬すずをはじめとする話題の役者たち、歴代朝ドラヒロインの出演など様々なトピックで話題を集めた。
本作の実現において、なかでも一番重要だったのが、ヒロインの故郷・北海道の十勝という舞台だ。およそ2年もの間、十勝に関わる撮影に協力してきたとかちフィルム・コミッション連絡協議会の松田里奈氏に、ロケハンを始めた当初の頃からの話を聞いた。
「最初は2017年10月に制作統括の磯(智明)さんと脚本家の大森(寿美男)さんが初めて訪れて、十勝の食事やお菓子屋さんのお話、特に女性で活躍されている酪農家さんのお話を聞かれていきました。その時はまだ『大型テレビドラマ』とだけ聞いていて、実際に十勝で撮ることも決まっていなかったので、11月頃に『なつぞら』でしたと発表があって、とても驚いたのを覚えています。初めは夏と冬に十勝でロケがあると聞いていたのですが、実際には合計35日間(2018年6月、2019年1月、4月、6〜7月)も十勝の季節折々の撮影をしていただけて嬉しかったです。ロケハンから撮影まで十勝に関連するシーンについては全部立ち会ってきたので、私としても終わってしまうのが寂しいです」
『なつぞら』ではなつの祖父・泰樹(草刈正雄)が、戦後、北海道・十勝地方に移り住み、土地を開拓し家族を築いていく。そんな開拓者の物語を描く上で、十勝のシーンで一番スポットが当たったのが「酪農」に関するパートだ。
「他の作品では、牧場で撮影したことはありましたが、今回、牛を撮影場所に運んで撮るというのが初めてで、その土地の地権者と酪農家の両方の許可を得た上で、農協に話に行って、実際に撮影に入るという流れでした。マコプロの皆さんが『大草原の少女ソラ』のロケハンのために十勝に来たシーンは、牛をバラバラの位置に移動させるのが大変でしたね。定位置に移動させようとするのですが、動物だから自分が行きたくないところには行きたくないだろうし、一頭が移動するとほかの牛も同じ方向に向かって動いてしまうんです。同じ大きさの牛を別の酪農家さんから揃えたり、牛を扱うシーンは特に大変でした。他にもじゃがいも畑のシーンは、撮りたいシーンのために逆算してジャガイモを育てたり、地元の方のご協力も得てやっていました」