『なつぞら』内村光良が明かす、「なつよ」に込めた思い 「“語り”と“父”のバランスは難しかった」
ついになつ(広瀬すず)と咲太郎(岡田将生)が千遥(清原果耶)と再会を果たし、最終回に向けて大詰めを迎えているNHK連続テレビ小説『なつぞら』。第1週の北海道編から個性豊かなキャラクターが多数登場し、物語を盛り上げ続けてきた。そんな本作において、唯一第1話から全話を通して物語を支え続けてきたのが、語りを担当している内村光良だ。
視聴者にとってお馴染みのフレーズとなった「なつよ……」「来週に続けよ」を、内村はどんな思いで吹き込んでいたのか。最終回を前にその裏側を聞いた。
「語り」であると同時に「父」である難しさ
ーーまずは基本的なところから教えてください。語りの収録はどんなペースで行われていたのですか。
内村光良(以下、内村):一度の収録で1週間分を録るのですが、このときに「仮ナレ」と「本ナレ」の2つがあります。「仮ナレ」は、例えば第20週が「本ナレ」だとしたら、第23週など、少し先のものを編集用として録るんです。なので、全26週×2回の52回分、ほぼ毎週NHKに通いながら録りました。
ーー一度の収録にかかる時間はどれぐらいに?
内村:収録する週の量にもよりますが、1週分録るのに1時間半から2時間ぐらいだったでしょうか。なので、毎回収録のときは約4時間ほどブースに籠もっていました。
ーー先日ラジオ番組で、「ブースに入った後は少し痩せる」とも話していましたね。
内村:本当に体重が減っているわけではないのですが、脳が疲れて収録後はフラフラになりました。これまでナレーションの仕事はしたことがなく、お芝居ともまったく違う感覚で、収録のたびに神経が研ぎ澄まされる感覚がありました。NHKの撮影所は1階なのですが、出演者の皆さんを背に僕だけ1人で8階のブースに向かう(笑)。(広瀬)すずちゃんが一度、サンダルをプレゼントしに来てくれたことがあったのですが、基本的にはこの収録期間、出演者の皆さんとはやり取りらしいやり取りはしていないんです。
ーー映像として観ていて、収録場所も近いのに会えないというのは残念ですね。
内村:そうなんですよ。でも、別の番組のときに藤木(直人)さんや、(富田)望生ちゃんと会う機会があって、そのときは『なつぞら』話で盛り上がりました(笑)。あとは千遥を演じる清原果耶さんに偶然会う機会があったんです。そのときはまだ奥原三兄妹が再会する前の時期だったので、「父親」として、その姿を観ることができてすごく嬉しかったです。
ーー内村さんは「語り」であると同時に、なつたちの「父」でもある役柄でしたが、なつの成長をどんなふうに見ていましたか。
内村:なつは戦災孤児となり、剛男(藤木直人)さんに引き取られて北海道で生きていきます。なつの人生を振り返ると、本当にたくさんの人に愛されて、みんなが手を差し伸ばしてくれていたんだなと。幼い頃は恵まれた境遇ではなかったですが、誰よりも幸運の持ち主なんじゃないかと思って見ていました。
ーー結婚や出産といったなつのターニングポイントが訪れるとき、「父」としてどんな気持ちでナレーションを行っていたのですか。
内村:なつの出産のシーンの語りは、ディレクターさんとかなり議論して何回か録り直したんです。「もうすぐ生まれるのか、私の孫が」という冷静なパターンもあれば、もっと感情的に「私の孫がぁぁぁ!」というパターンもあったり(笑)。実は私も放送されるまでどれが採用されているか分からないんです。だから視聴者の皆さんと同じように毎朝放送を楽しみにしています。「語り」でありながら「父」として難しかったのは、毎話必ずある「なつよ」ですね。なつが一度はプロポーズを受けた坂場(中川大志)に別れを告げ、初めて“失恋”という気持ちを知ったとき。あのときは、「なつよ」だけでその心配する気持ちや、どうにもならない気持ちを表現しなくてはいけなかったので、非常に難しかったです。