『リーガル・ハート』は弁護士ドラマのイメージを更新する 『プロジェクトX』に共通する世界観

『リーガル・ハート』弁護士ドラマを更新

 『リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~』(テレビ東京)が9月2日に最終回を迎える。司法制度改革を経て各分野で法律家が活躍する時代となったが、ドラマの世界でも新しい試みが見られる。2018年にスタートしたドラマBiz(テレビ東京)は、毎週月曜夜10時というビジネスパーソンが視聴できる時間帯に、企業買収や職場のハラスメントなどを題材にした作品を送り出してきた。『リーガル・ハート』の原作は、現役弁護士・村松謙一氏による『いのちの再建弁護士 会社と家族を生き返らせる』(角川文庫/KADOKAWA刊)で、同枠6作目にして初のノンフィクション原作となった。

 主人公の弁護士・村越誠一を演じるのは反町隆史。妻・祥子を和久井映見が演じており、反町と和久井の共演は『バージンロード』(フジテレビ系)以来22年ぶり。『グッドワイフ』(TBS系)の記憶も新しい橋爪功を村越の師匠・米倉弁護士に、村越を支える法律事務所の事務員・永井茜役に『リーガル・ハイ』(フジテレビ系)にも出演した小池栄子を起用するなど、キャスティングも話題性豊富だ。『カンブリア宮殿』(テレビ東京)でインタビュアーを務める小池は、『ヘッドハンター』に続いて、2度目のドラマBiz登板となった。

 ドラマBiz初となる法律家が主役の『リーガル・ハート』は、他の法廷ドラマにはない特色がある。近年、弁護士や検察官を主人公にしたドラマ作品は増えており、“型破りで正義感の強い”ヒーローというイメージが定着しつつある。使命感に燃え、他の弁護士が手をつけない困難な事件を受任する点で、『リーガル・ハート』の村越も、それら主人公の系譜に連なる。しかし、「企業を救うことはいのちを救うこと」という信念を持つ村越の戦場は裁判所に限られない。全国各地、クライアントの工場や魚市場、介護施設など、必要とあれば、どんな場所にでも赴く村越のスタンスは、「弁護士=法廷で弁論する人」というステレオタイプの対極にある。

 年間8,000件以上と言われる中小企業の倒産は実態が表に出にくく、ニュースにならないことも多い。裁判所を通じて行う強制力を伴った「民事再生」や「会社更生」に加えて、金融機関との話し合いで債務を縮小し、中長期的に収益体質へ転換する「私的整理」を活用するのが村越の手法の特徴である。一般の視聴者にとって、やや踏み込んだ専門性の高い内容だが、ドラマでは説明的な要素を最小限にとどめつつ、進行上ポイントになる場面でフリップを挿入するといった工夫がされている。

 原作で村松氏は「再建弁護士の守備範囲は、法律的なことに留まらず、経営の分野に及んでいる」と語っている。中小企業にとって企業再生は究極の経営判断を迫られる場面であり、経営コンサルタントの領域に接する『リーガル・ハート』のキャラクター設定は、法廷ドラマで見慣れた弁護士のイメージを更新するものだ。



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