伊勢谷友介演じる雫はなぜ殺人を犯したのか 『ボイス』サスペンス×ホラーの絶妙な掛け合わせ

伊勢谷友介演じる雫はなぜ殺人を犯したのか 『ボイス』サスペンス×ホラーの絶妙な掛け合わせ

 『ボイス 110緊急指令室』(日本テレビ系)の中で描かれる事件のスリルは、今クールのドラマの中でも別格である。

 本作では110番通報から始まる事件の解決劇とともに、主人公の刑事・樋口(唐沢寿明)が、妻を殺した真犯人を追う物語が描かれる。さて、ここでまず注目したいのが、110番通報に始まる各事件解決までのスリルである。作中では、緊急指令室内に新たに創設されたECUと呼ばれるユニットで、ボイスプロファイリングを務める橘(真木よう子)と、現場周辺を駆け回る樋口との連携によって進んでいく。SOSを発する被害者の声の情報を橘が分析し、それらの分析をもとに樋口に指示を出して、被害者の救出に向かう。

 ただ、その救出は一筋縄でいかないことが多い。SOSの声から、被害者が現在どの建物の、どの場所にいるのかを突き止めなければならないわけだが、その間にも被害者の身には刻一刻と危険が迫っている。例えば、第5話での事件。家の洗濯機に隠れて通報している少年からのSOS。家の中では一人の女性が、刃物を手に少年の隠れ場所を探し回っているという状況なのだが、まさしく手に汗握る展開の連続であった。

 「逃げ場のない空間」「限定された舞台」は、恐怖を伝える物語にはもってこいの設定である。いつ敵が気づき、どうやって襲ってくるか分からないという状況が、視聴者にスリリングな体験を味わわせる。洗濯機の少年のケースもそうだが、似たようなことは他の話でも見られる。第1話で若い女性が連れ去られた事件でも、監禁された部屋の内部で、被害女性のほんのすぐ近くを犯人がウロウロする場面が不気味に描かれた。この「かくれんぼ」の描き方が見事である。被害者が隠れるすぐ近くまでやってきたかと思えば、気付かずにその場を去っていく……かのように見せて、観る者に束の間の安心をもたらす。ところが、犯人がその後にある手がかりを見つけてしまったがゆえに、再び戻ってきた犯人によって被害者の隠れ場が突き止められてしまう(こういう展開は本当にゾッとする)。第1話の女性は、身を隠していた部屋の外に落としてしまった所持品の一部が、第5話では洗濯機から漏れ出ていた少年の血が、それぞれ犯人に確信を与える手がかりとなってしまった。

 また、本作では「クライシスタイム」を意識して、橘らは迅速な対応を繰り広げるわけであるが、この「タイム」の存在が先述のホラー的な要素と相まって、観る者をハラハラさせる。「クライシスタイム」は「3分で現場到着、5分で現場確認、10分で検挙」という被害者の生死を分ける基準となる時間。本作中で迫る危機を時間の経過とともに示されることで、どこかアメリカの『24』シリーズに似た臨場感が画面から伝わる。それゆえ、被害者のすぐ近くに犯人が“いる”という恐怖を見せつけられながらも、それと同時にまさしく1分1秒が勝負になる逼迫感がリアルに表現されるのだ。サスペンス的要素とホラー的要素の絶妙な掛け合わせである。本作中では、実際にタイム通りに上手く事を運ぶことの難しさも描かれるのだが、ジャック・バウアーさながらの樋口の現場での「狂犬」ぶりが事件解決の支えになっている。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる