宮藤官九郎ドラマにおける阿部サダヲは“本音”を体現? 『いだてん』と過去作から探る

クドカンドラマにおける阿部サダヲ

 最初に俳優・阿部サダヲを知ったのは1997年の刑事ドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)だったと思う。

 阿部はある殺人事件の関係者に恨みを持つ男の役を演じており、終始無言だが、眼が印象的な少年の面影がある青年という印象だった。そのため、繊細な内面を持った犯罪者の役を得意とするような影のある俳優なのかと思っていた。

 その後、磯山晶プロデュース、宮藤官九郎(クドカン)脚本の『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』といったTBS系のクドカンドラマの脇役でよく見るようになり、次第に彼が宮藤と同じ劇団大人計画に所属する俳優なのだと認知していった。

 『池袋』では風俗が大好きなお巡りさん・浜口。『木更津』ではヤクザとつながりのある草野球チームのコーチ・猫田というかなり胡散臭い役を演じていた阿部だが、奇妙な動きをしながら機関銃のようにまくし立てるその芝居には、独自のグルーヴ感と愛嬌があるのだが、同時にちょっと不愉快な圧みたいなものがあった。

 おそらくそれが一番出ているのが『木更津』の猫田である。主人公のぶっさん(岡田准一)たちの先輩で野球部のコーチである猫田は、上下関係を重んじ、上には媚びへつらい、下には高圧的な態度を取ろうとする。

 宮藤は『木更津』で描かれた「男子校のノリ」や地元の上下関係ですべてが決まってしまう世界観について「僕にとっては、本当につらい関係性」だと語り、『木更津』は悪意からスタートしていると『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』のシナリオ本(角川書店)巻末に掲載された磯山晶との対談で語っているのだが、その悪意がもっとも強く現れているのが猫田だろう。

 磯山は「大の大人が朝5時におきて草野球をするなんて信じられない。なぜ阿部さんは毎週やってるのだろう?」と宮藤がよく言っていた、と対談の中で語っている。阿部は小中高と野球部だったそうで、おそらく宮藤にとって阿部はそういった体育会系のノリを体現する存在なのだろう。

 出世作となった『マルモのおきて』(フジテレビ系)を筆頭に、阿部が演じる役は必ずしも嫌な奴ばかりではない。むしろ繊細で優しい青年の方が多いのではないかと思う。そんな中で、同じ劇団の宮藤が書く阿部のキャラクターに猫田的な存在が多くなるのは、宮藤が阿部をそう見ているからだ。



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