『なつぞら』だけじゃない!? 「バックステージもの」が描く、アニメ業界ならではのドラマの数々
愛の裏返し? ダークサイドを描くバックステージものは出現するか
バックステージものには、愛を表明するタイプの作品の他、シニカルな態度で業界を批判的に描く作品もある。それもある種、愛ゆえの鞭という面もあるが、例えば、ロバート・アルトマン監督の『ザ・プレイヤー』は、敏腕プロデューサーの起こした殺人事件の顛末を通して、儲かりさえすればなんでもありのハリウッドの金満体質を批判する内容だったし、デビッド・リンチの『マルホランド・ドライブ』もハリウッドのダークサイドを描く趣旨の作品だった。
アニメ業界が成熟し、認知が拡大するにつれて、内からも外からも様々な視線にさらされる。愛で動く業界とはいえ、美しい話ばかりではないので、今後はダークサイドを描くアニメのバックステージものも出現してゆくのかもしれない。『スモーク』などで知られる映画プロデューサーの井関さとる氏は、1本の映画制作で一生分の体験をすることがあると語っていたことがあるのだが、本当にそれぐらい映画やアニメの制作の裏側ではいろんなことが起こっている。ネタには事欠かない世界なので、いろいろなタイプのバックステージものが生まれることを筆者は期待している。
■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。