『なつぞら』から「女性と仕事」の今昔を考える 「小田部問題」の現代に通ずるテーマ性

「お仕事ドラマ」としての『なつぞら』

 コラムニストの海原かみなさんが最近、『日刊ゲンダイ』誌上のコラム「「偽装不倫」も失速中…恋愛ドラマはなぜ視聴率を稼げなくなったのか」で、昨今のテレビドラマに見られる変化についてわかりやすくまとめています。コラムのタイトル通り、いまや恋愛ドラマ(トレンディもの)が「絶滅寸前」なまでに不振だというのです。ここ数年、平均視聴率10%をクリアした恋愛ドラマはほとんどなく、現在放送中のものも杏主演の『偽装不倫』(日本テレビ系)含め、軒並み苦戦しているらしい。人気ドラマといえば、1990年代の「月9」に象徴される美男美女が主演の王道恋愛ドラマというイメージがまだまだ根強いぼくのようなアラフォー世代から見ると、まさに隔世の感という感じです。

 ともあれ、それに代わって、現在の人気ドラマの要素として海原さんが挙げる、「悪いヤツが最後にヘコまされてスカッとする」「見逃してもついていける1話完結もの」「コミカルな笑いがある」という要素に並んでいるのが、「女性のお仕事ストーリー」です。なるほど、確かにいまのテレビドラマの中心視聴者層である30〜50代の独身、あるいは子育て・共働き世代の女性たちにとって、もっとも共感できる「お仕事ドラマ」にヒット作・話題作が増えているように思います。あるいは、子育て支援や「働き方改革」をめぐる日本社会の現状も、こうしたトレンドに確実に影響を与えているでしょう。

 さて、大森寿美男さんの脚本によるNHK朝の連続テレビ小説の記念すべき第100作『なつぞら』もまた、そんな「お仕事ドラマ」のひとつとして、さしあたりはこうした昨今の人気ドラマのトレンドに連なっているといえるでしょう(まあ、「朝ドラ」自体だいたいいつもそういうものではありますが)。『なつぞら』はこのサイトのレビュー記事でもお馴染みですが、北海道・十勝でたくましく育てられた戦災孤児の少女・奥原なつが、昭和30年代、戦後日本のアニメ業界でアニメーターとして活躍していく姿を描く物語です。また、広瀬すずさんが演じているヒロインの奥原なつの設定には、よく似た実在の人物がいるとも考えられています。このドラマのアニメーション時代考証を担当している小田部羊一さんの亡妻であり、日本の女性アニメーターの草分け的存在として、草創期の東映動画(現在の東映アニメーション)で数々の名作を手掛けた奥山玲子(1936-2007)というひとです。

 それに伴い、なつ以外の『なつぞら』の物語のディテールや登場キャラクターにも、モデルと思われるようなひとたちがいます。それにかんしては、大山くまおさんによるコラム「『なつぞら』東洋動画のモデルとなる人々は? 日本の「漫画映画」の礎築いた東映動画のレジェンド」などが簡にして要を得た情報をまとめていますので、ご覧ください。

 このコラムでは、そんな「女性のお仕事ドラマ」としての『なつぞら』の現代性の一端を、ドラマのモティーフとなっているだろう東映動画の史実とも重ねあわせながら紹介してみたいと思います。

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