『Heaven?』のドタバタ劇は意外にもビジネスの世界に通じる? 石原さとみの“格言”を深読み

『Heaven?』のドタバタ劇はビジネスに通じる?

 後半戦突入を迎えた石原さとみ主演の『Heaven?~ご苦楽レストラン~』(TBS系)。

 物語の舞台となるのは墓地の裏にあるフレンチレストラン「ロワン・ディシー」。オーナーを務める主人公・黒須仮名子(石原さとみ)が「自分が心ゆくままにお酒や食事を楽しみたい」という欲望を叶えるために道楽で開いた贅沢この上ない“オーナーの、オーナーによる、オーナーのための”「極楽」空間。

 この風変わりな設定もあってか、これまでレストランが舞台となる作品の多くがプロフェッショナルでストイックな料理人の姿を映し出していたのに対し、本作はオーナーに負けず劣らず個性豊かな従業員たちによって繰り広げられる「ご苦楽」コメディテイストに仕上がっている。

 おふざけが過ぎ、視聴者としては少々中だるみしてしまいがちになるのが玉に瑕だが、多種多様なお客様と個性的なスタッフで成り立つ「レストラン」という場で生まれる人間ドラマがリアルに描かれる。またそこで働く料理人、ソムリエ、給仕係など全てのクルーが呼吸を合わせてお客様の口に料理を届けるチーム戦のドタバタ劇もおおっぴらげにしているため、この作品で取り上げられるテーマは飲食業や接客業の中での話に留まらず、ビジネスやチームワークの本筋を説いているとも言える。

 第2話では「真の自由とは?」、第6話では「真のホスピタリティとは?」が問われる内容となっており、思いのほか毎回オーナー仮名子がなかなか本質を突いたことを言っており人生の教訓めいた発言が飛び出したりする。

 オープン当初、閑古鳥が鳴いており使える食材にもどんどん制限がかかるのを嘆くシェフ小澤(段田安則)のエピソードから、「制限の中での自由こそ尊い」という真理が炙り出される。校則があるからこそその範囲内でのオシャレや制服の着こなしを楽しめた学生時代、予算に制限があった貧乏旅行の方が思い出深かったり、時間的にも金銭的にも制限されていた若かりし頃の恋愛の方がなぜかキラキラ尊く輝いていたように映ったり……「制限」は何も不自由を強いるものでも、堅苦しいものでもなく、今手にしているリソースの可能性を最大限引き出すための創意工夫のきっかけを与えてくれたりする。それはきっとビジネスの世界においても言えることだろう。

 また前回の放送では、お客様の要望にやみくもに「寄り添い」すぎてサービスの限度を超えるとお店が壊れてしまう、という「ホスピタリティ」の真髄が描かれていた。これも「制限」の話と通ずる部分がある。「郷に入っては郷に従え」ではないが、その場その場でTPOに合わせたふさわしい振る舞いというものが存在し、それが礼儀作法、マナーであったりする訳だ。背筋がシャンと伸びるような、客側も試されているかのような少しの緊張感や、きちんとしたテーブルマナーに則って食事をする経験、“非日常”空間までもを、ある一定水準以上のレストランという場は提供しているのである。

 それをお客様の要望というよりはわがままに全てを寄せていては、日常と変わらない空間しか生み出せなくなってしまう。

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