会社経営×スポーツの必勝パターンに限らない? 『ノーサイド・ゲーム』から考える日曜劇場の変化
池井戸作品がドラマに重宝される所以
それにしても、今回、原作小説を先に読んだのだが、思った以上にドラマ版の印象と違うことに驚く。ドラマ版は設定やテーマは同じなのだが、時系列が入れ替わっていたり、キャラクターの性格が変化していたりと違う場面も多い。『半沢直樹』も大胆なアレンジが施されていたが、必ずしも原作通りというわけではなく、小説は小説、ドラマはドラマという感じで、自由に脚色することが許されてきたからこそ、池井戸作品はドラマに重宝されるのだろうと改めて思った。
ドラマ版がクールにマネジメント面からラグビーというスポーツに切り込んでいく映画『マネーボール』のような作りであるのに対して、ドラマ版は各キャラクターの味付けが濃く、その分だけ人情ドラマとしての側面が強くなっている。特に主人公の君嶋は大泉が演じることで、情けなさと愛嬌がプラスされている。
同じ池井戸ドラマでも『下町ロケット』の阿部寛や『陸王』の役所広司といった歴代の主人公が男らしい父性を漂わせるリーダーだったのに対し、46歳という年齢もあってか、大泉が演じる君嶋には感情を高ぶらせてみんなを引っ張っていくという強いリーダーシップがあるわけではない。感情を爆発させる場面もあるにはあるのだが、それ以上にデータを分析して最適解を選んでいこうという良く言えば理知的、悪く言うなら狡猾さがある。その理知的な部分と池井戸ドラマが過去に描いてきた「熱血」が程よくブレンドされているのが今までにない新しさで、おじさん向けの暑苦しいドラマという印象が強い日曜劇場も時代に合わせて変化していることがよくわかる。