ルーク・スカイウォーカーからチャッキーへ マーク・ハミルを救った“声の世界”との邂逅

ルーク・スカイウォーカーからチャッキーへ マーク・ハミルを救った“声の世界”との邂逅

 印象からくる客観的イメージを完全に払拭するには、多分な時間を必要とする。いわゆる “当たり役”のイメージというのは、役者にとっては死活問題なのである。映画の世界では、演ずるキャラクターのイメージ固着は、役者人生の今後に大きな影響を及ぼしかねないのだ。例として、元子役のダニエル・ラドクリフは、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)と以降のシリーズの記録的ヒットによって、“メガネの魔法少年”というイメージを完全なるものとした。同シリーズの終了後も幾つかの映画に顔を見せているが、やはりラドクリフの背景には、ハリー・ポッターというペルソナの影を絶えず感じてしまう。このイメージをいかに払拭できるかが、役者の未来に直結する。

 俳優のトム・サイズモアは、軍人のタイプキャストとして、映画界ではよく知られた存在だ。『プライベート・ライアン』(1998)『パール・ハーバー』(2001)『ブラックホーク・ダウン』(2001)など幾つかの戦争映画の中で、サイズモアは軍人という印象を定着させ、以後の別作品でも似た役柄にキャストされている。彼の場合は、固定化した役者イメージを利用し、“軍人俳優”としてのキャリアを築き上げてきたワケだが、大抵の役者はこうした印象付けを嫌う。

 近年では、ヒュー・ジャックマンが長年演じた『X-MEN』シリーズ(2001-)でのウルヴァリン役を自ら降板し、その後、『グレイテスト・ショーマン』(2017)では、ミュージカル俳優としての更なる円熟ぶりを久々に披露した。ラドクリフと共演したエマ・ワトソンは、「ハーマイオニーを演じた女優」というステレオタイプを脱し、『美女と野獣』(2017)ではディズニープリンセスに抜てきされている。

 はるか彼方の銀河系を描く、スペース・オペラの金字塔『スター・ウォーズ』(1977)で、映画史に残る世界的キャラクター、ルーク・スカイウォーカーを演じた名優マーク・ハミルも、ジェダイの騎士としてのイメージに長年悩まされてきた人物だった。『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980)『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(1983)と、『スター・ウォーズ』旧三部作を主人公ルークとして駆け抜けたハミルだが、それ以降はあまり多くのヒット作に恵まれることなく、伸び悩んだ時期があった。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(c)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

 役者人生の岐路に立たされていた、そんな折、彼が役者としての未来に希望を見出したのは、なんと“声の世界”だった。ジェダイの騎士として、多くの人々を魅了し、勇気を与えたハミルが、声優として再び返り咲いたのだ。しかも、声優としてのマーク・ハミルを極めて印象付けたのは、ルーク・スカイウォーカーという正義的キャラクターとは真逆の存在、ジェダイとは似ても似つかない、ジョーカーだった。DCコミックスの看板キャラクター、バットマンの宿敵ジョーカーは、マーク・ハミルのキャリアを遮る、ルーク・スカイウォーカーの陰影を一気に消し飛ばした。ハミルは現在までに、アニメーションやビデオゲームなど、数多くの『バットマン』関連作の中で、ジョーカーという稀代のヴィランに命を吹き込み続けている。声の世界との邂逅こそが、ハミルにとっての“救い”であり、ルークとの一旦の決別だった。

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