ルーク・スカイウォーカーからチャッキーへ マーク・ハミルを救った“声の世界”との邂逅

マーク・ハミルを救った“声の世界”との邂逅

 そんなハミルだが、声優としての実力は、実写映画の中でも異彩を放っている。誘拐事件を題材に描いた『ブリグズビー・ベア』(2017)では、少年を誘拐したテッド・ミッチャムとして出演した一方、同作ではボイスアクターとしてもキャストされている。映画の中の架空の教育番組において、クマのマスコットキャラクター、ブリグズビー・ベアと、その宿敵、サン・スナッチャーの声を担当。正義のベアと、悪のサン・スナッチャーという、対極の立場のキャラクターをひとつの作品内で演じ分けている。役者として成熟したマーク・ハミルの実写の演技と、ボイスアクターとしてのハミル、その両方を堪能できる贅沢な作品なのだ。

『ブリグズビー・ベア』(c)2017 Sony Pictures Classics. All Rights Reserved.

 そして最近、リメイク版『チャイルド・プレイ』(2019)にて、ハミルはいよいよシリアルキラーとなった。殺人人形チャッキーとなったのだ。最先端のAI(人工知能)を搭載する現代の殺人人形チャッキーを演じるハミルは、映画の中で、少し不気味で愛らしい“歌”を披露。ブリグズビー・ベアのような不思議な魅力と、ジョーカーの狂気を交わらせた新境地に挑んでいる。オリジナルのチャッキーを演じたのはブラッド・ドゥーリフだったが、今作ではハミルが演じることによって、これまでのチャッキーにはなかった柔らかさを体現している。ハミル版のチャッキーは、もちろん狂気も含まれるが、総体的には「なんだが不思議な憎めないヤツ」として、描かれている。

 声優としてのキャリアを順調に築きつつ、ルークと決別したかと思われたが、2015年には『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』で、およそ30年ぶりに、ふたたびルーク・スカイウォーカーを巧演した。続く『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)にて本格復帰し、最終章となる『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』(2019)にも出演を予定している。

 なぜここにきて、ようやくイメージを払拭したにもかかわらず、ふたたびジェダイとなる道を選んだだろうか。一度、ルークというペルソナを消し去ったからこそ、ふたたびルークを演じる気になったのかもしれない。彼が声の世界に足を踏み入れていなければ、いまもルークのイメージに悩んでいたのなら、ともすればハミルはルークと決別し、銀河に戻ることもなかったかもしれない。

■Hayato Otsuki
1993年5月生まれ、北海道札幌市出身。ライター、編集者。2016年にライター業をスタートし、現在はコラム、映画評などを様々なメディアに寄稿。作り手のメッセージを俯瞰的に読み取ることで、その作品本来の意図を鋭く分析、解説する。執筆媒体は「THE RIVER」「IGN Japan」「映画board」など。得意分野はアクション、ファンタジー。

■公開情報
『チャイルド・プレイ』
全国公開中
監督:ラース・クレヴバーグ
製作:セス・グラハム・スミス、デヴィット・カッツェンバーグ
脚本:タイラー・バートン・スミス
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー
配給:東和ピクチャーズ
(c)2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved. CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:https://childsplay.jp
公式Twitter:https://twitter.com/ChildsPlay_JP

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