“世界を肯定する力”をくれる京都アニメーション その卓越した技術が伝えてきたもの

京都アニメーションの功績を振り返る

京アニの技術は世界を肯定するためにある

 京都アニメーションは人材を大切にし、その人材の底上げでもってアニメーションの質を高めてきた。緻密な作画、キャラの芝居の組み立て方、背景のリアルさと美しさ。TVアニメに求められる以上のクオリティを常に追求しつづけ、ファンを魅了し続けてきた。

 その卓越した技術を、京都アニメーションは一貫して、世界を肯定するために用いてきた。

 なぜこんなにも美しい背景を描くのか。それは、我々が生きているこの世界は実は美しいのだと伝えるためではないか、なぜこんなにもキャラクターたちは生き生きとしているのか。それは美しい世界を生き生きと過ごすことの素晴らしさを伝えるためではなかったか。

 世界を肯定するということは、簡単なことじゃない。生きていれば理不尽に遭遇する、大切な人を失う時もある。その度に心は曇り、世界を否定したい気持ちに駆られる。一人で生きていたら、とても世界を肯定する力なんて湧いてこないと思う。しかし、京都アニメーションの作品には、そういう気持ちを押し留めてくれる力にあふれている。

 アニメーションは「絵」であるが、京都アニメーションの作品に宿るその力は決して「絵空事」ではなかった。一人一人のスタッフが手を抜かずに人を観察し、世界を観察し、丹念に再構成されたその作品の中には、確かに命の手触りが存在している。

 2018年に放送・配信された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』という作品は、戦争で両腕を失った少女が手紙の代筆屋となり、人々の気持ちを手紙に綴る仕事を通じて喪失と向き合う物語だ。ヴァイオレットと呼ばれる少女は、自分を育ててくれた少佐の死を受け入れることができなかったが、手紙の代筆を通じて多くの人々の気持ちを向き合い、様々な感情を学んでいく。

 10話では、先の長くない母親が一人残される愛娘のために、手紙を残すのをヴァイオレットが手伝うエピソードが描かれる。母と過ごせる時間が残りわずかであることを悟っている小さな娘は、貴重な母との時間を奪うヴァイオレットに辛くあたってしまう。「手紙なんて書かなくていいじゃない」と言う少女に向かって、ヴァイオレットは「届かなくていい手紙なんてない」と優しく諭す。

 母親の手紙は、残された娘の誕生日を毎年祝うためのものだった。時を超えて母の想いは、手紙を通じて娘に届けられる。

 手紙は人の想いを届け、心をつなげてゆく。世界が理不尽に大切な人を奪おうとも、人の想いは消えずに受け継がれてゆく。手紙も映画もアニメも、人の想いを消さずに残すためにある。

 我々が京都アニメーションの作品から受け取ったものは、世界を豊かに肯定する力だ。彼ら/彼女らは、映像という手紙にその想いを我々に届けてくれた。その力は、我々がそれを自ら捨てない限り、何があろうとも生き続けるはずだ。

 筆者は、京都アニメーションが届けてくれたその力を、意地でも忘れない。何があっても忘れない。

 京都アニメーションは、世界中からの支援の申し出に対して、専用の支援金預かり口座を開設した。被害者遺族や、障害を負った方々への補償金だけでも莫大な金額が必要となる。遺族にとっても、会社にとっても長く苦しい戦いになるだろう。

 八田社長のメッセージ「京都アニメーションは、これからも世界中の人たちに夢と希望と感動を育むアニメーションを届け、社員、スタッフの幸せを実現し社会と地域に貢献していくため手を差し伸べて下さる方々とともに、必死に戦っていきます」を信じる方は、どうか支援をしてほしい。筆者も毎月可能な額で支援していくつもりだ。

※支援金預かり口座は下記のとおり
http://www.kyotoanimation.co.jp/information/?id=3075
<株式会社京都アニメーション 支援金預かり専用口座>
銀行名 京都信用金庫
銀行コード 1610
支店名 南桃山支店
店番号 048
口座種別 当座預金
口座番号 0002890
口座名義 株式会社京都アニメーション 代表取締役 八田英明
※ 表示名「カ)キヨウトアニメーシヨン」

BANK NAME : THE KYOTO SHINKIN BANK
SWIFT : KYSBJPJZ
BRANCH NAME : MINAMI MOMOYAMA BRANCH
BRANCH NUMBER : 048
ADDRESS : 16-50, YOSAI, MOMOYAMA-CHO, HUSHIMI-KU, KYOTO-SHI, KYOTO-HU, 612-8016 , JAPAN
ACCOUNT NUMBER : 0002890
ACCOUNT HOLDER : KYOTO ANIMATION CO.,LTD., REPRESENTATIVE DIRECTOR, HATTA HIDEAKI

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■リリース情報
『リズと青い鳥』
Blu-ray&DVD発売中
【台本付数量限定版 Blu-ray】
8,800円+税
【Blu-ray】
7,800円+税
【DVD】
6,800円+税
原作:武田綾乃(宝島社文庫『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章』)
監督:山田尚子
脚本:吉田玲子
音楽:牛尾憲輔
キャラクターデザイン:西屋太志
美術監督:篠原睦雄
色彩設計:石田奈央美
楽器設定:髙橋博行
撮影監督:髙尾一也
3D監督:梅津哲郎
音響監督:鶴岡陽太
音楽制作:ランティス
音楽制作協力:洗足学園音楽大学
吹奏楽監修:大和田雅洋
アニメーション制作:京都アニメーション
発売元:京都アニメーション・『響け!』製作委員会
販売元:ポニーキャニオン
(c)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
公式サイト:http://liz-bluebird.com/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる