黒木華は自分が好きな自分を模索する 『凪のお暇』が描く“空気を読む”ということ

黒木華は自分が好きな自分を模索する 『凪のお暇』が描く“空気を読む”ということ

 “自分を苦しめる呪縛からは逃げてもいい“。近年のTBSドラマは『逃げるは恥だが役に立つ』をはじめ、何かと「〜べき」と縛られがちな私たちを解放してくれた。だが「逃げる」という選択をしたものの、「逃げて“何をするのか“」まで見えていないのが、このドラマの主人公だ。

 「逃げる」というのは、あくまで手段。手段とは「目的」を達成するための方法だ。何のためにその手段を取っているのか、その選択をしてどうなりたいのか。それを見失うと、私たちはずっと空回りした気持ちになってしまう。

 「空気を読む」というのも、本質的には自分の生きやすい空気(=雰囲気、状況)を作るための手段でしかない。凪の「空気を読んだ」行動も「変な髪だと言われて傷つきたくない」「同僚と仲良くしたい」「慎二と結婚したい」という目的を達成するためのベースとなるはずだった。しかし気づけば、そのベースを作るだけで手一杯になってしまい、その先にある目的を達成するまでのステップを踏み出せない。そしていつしか、その目的さえも見えなくなっていく。

 ウィッシュリストを作ろうとした凪の手が止まり、「やりたいことがない」となったのも、本来あったはずの目的を見失い、「空気を読む」手段そのものが目的になっていた証拠。慎二が、凪に対して「お前は変われない」と言っていたのも、きっと慎二が誰よりも「空気を読む」を手段として活用してきたからかもしれない。

 「自分らしく生きる」とは、自分の選択の「目的」を見失わないことから始まる。空気を読んで選択した行動は、「周囲のために」というのと同時に「自分のため」でもあること。アクションを起こすときに大切なのは、「相手」だけではなく「自分」も満足できるものであること。そのバランスが取れない相手や組織の「空気」なら、いっそ逃げて、より自分が心地よいと思える空気を作れる人や環境を求めればいい。だが「それができれば苦労しない」という人が多いからこそ、今この物語が求められているのだろう。

 「人が求める自分」にお暇をして、「自分が好きな自分」を見つめ直し始めた凪。冷たく当たりながら、実はそんな自然体な凪を知っていて、影で「めっちゃ好き」と泣く慎二。そして、サラリとハグを交わして凪の心を奪っていくゴン。それぞれが自分なりに幸せになろうともがく姿を通じて、私たちはまた新たな人生のヒントをもらえるのではないか。これから3ヶ月間、金曜日の夜がますます楽しみになってきた。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて、7月19日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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