ゲームデザイナー・小島秀夫の映画からの影響を考察 最新作『DEATH STRANDING』に寄せて

小島秀夫とMEME

 小島氏は、製作した数々の作品で様々なテーマを語ってきた。反戦反核に、遺伝子情報、情報操作など『メタルギアシリーズ』だけでもたくさんのテーマを扱ってきたが、個人的に筆者が最も重要なテーマだったと考えているのが「MEME(ミーム)」だ。

『僕が愛したMEMEたち』メディアファクトリー刊

 MEMEとは、生物学的な遺伝子情報(GENE)に対して、文化を形成する情報の単位として提唱された。肉体の進化は遺伝子情報に組み込まれているが、文化のつながりや発展を刻むのが文化的遺伝子(MEME)という概念だ。小島氏がMEMEをテーマとしたのは『メタルギアソリッド2』が最初であるが、『メタルギアシリーズ』が、相互に繋がり、スネークという人間が形成された歴史を語る内容であり、シリーズ全体がMEMEのようにつながっているかのような構成になっている。当然、『メタルギア』以前の作品、『スナッチャー』や『ポリスノーツ』のエッセンスを後の作品に見て取ることもできるので、MEMEという概念は小島氏の仕事の全てに関わるものであると言える。小島秀夫からの絶大な影響を公言し、小島氏も自身の最大の理解者だと語る伊藤計劃氏が「MGSシリーズへと受け継がれるポリスノーツ(『伊藤計劃記録』所収)」というコラムを書いていることからも明らかなように。

 小島氏は、自身が影響を受けた本の書評連載にも『僕が愛したMEMEたち(メディアファクトリー刊)』と名付けているが、それは先人が残した作品から受け取ったものを、また誰かへとつなぐバトンのような行為であると言えるかもしれない。もちろん、書評連載にとどまらず、今なお第一線で小島氏が新しいゲームを作り続けるのは、自らが受け継いできた文化的遺伝子を後世に残すためであるまいか。ゲームの受け手だけでなく、若い製作者たちにも自らのエッセンスを継承してほしいという想いの強さゆえに小島氏はまだ走り続けている。いささか大げさに言えば、それは人類の歴史を次のステージに進めるための戦いだ。

 ロラン・バルト風に言えば、人類の歴史は物語とともに始まっているのだ。その歴史を前に進めることがクリエイターの使命であると考えているのではないか。小島氏の作る作品には常にそういう「大局観」を感じさせる。

「人間は消滅しない。ぼくらは、それを語る者のなかに流れ続ける川のようなものだ。人という存在はすべて、物理的肉体であると同時に語り継がれる物語でもある」(『僕が愛したMEMEたち』メディアファクトリー刊 、P139)

 最新作『DEATH STRANDING』の全貌はまだベールに包まれているが、その内容について小島氏は「つながりが重要」な要素になると語っている。

「プレイヤーはゲーム内で世界と再びつながらなければならない。1人ぼっちで孤独でも、つながりを持とうとする。ストーリーとゲームプレイのキーワードは“つながり”だ。もちろん遮る物はたくさんあるけど、キーとなるのはつながりだ」(参照:https://jp.ign.com/death-stranding/35160/news/death-stranding

 世界と再びつながるというどういうことだろうか。人類のMEMEのつないできた歴史の流れに連なれ、ということだろうか。常に時代の少し先を意識する小島氏のことだ、最新作も現代社会を生きる我々に大きなインパクトを与える何かがあるに違いない。そんな少し先の未来を、自らの選択で動かし、体験し、物語の遺伝子は築かれていく。かつて、数多くの映画が小島秀夫に世界を見せてくれたように、小島氏はゲームで我々に世界のこれからを体験させてくれるのだ。 

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。



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