ゲームデザイナー・小島秀夫の映画からの影響を考察 最新作『DEATH STRANDING』に寄せて

 「物語は、人類の歴史とともに始まる」とフランスの哲学者ロラン・バルトは自著『物語の構造分析』の序説に記している。曰く、どんな時代でも、どんな民族も、どんな社会階級の人間も物語を持ち、しかも異なる文化の人々にも需要されてきたのだ、と。

 そして、物語は様々な形式で語られてきた。「神話、伝説、寓話、おとぎ話、短編小説、叙事詩、歴史、悲劇、正劇、喜劇、パントマイム、絵画、焼絵ガラス、映画、続き漫画、三面記事、会話(同著、P1)」など、あらゆる素材で人類は物語を語ってきたのだ。

 ロラン・バルトがそのように書き記したのは1966年だが、2019年に再度語り直すならば、このリストにゲームを加えるべきだろう。現代の物語の発展を考える上で最先端の媒体であるゲームを抜きに語るべきではない。ゲームが、上に挙げられた既存の素材群と決定的に異なるのは、需要者が能動的に物語を動かす(ように感じられる)点だ。用意された直線的なシナリオに沿って進められるゲームも、都度プレイヤーは与えられた選択肢から自ら行動を選ぶことによって進められるゲームは、物語の体感濃度に大きな変化をもたらした。

 ゲームによって、いかに物語を語るべきなのか。多くのゲームクリエイターが様々な試みをしてきたのだが、そのフロントランナーの1人が『メタルギアシリーズ』で知られる小島秀夫だ。彼の肩書は「ゲームデザイナー」であるが、その本質は純然たるストーリーテラーであると筆者は思う。本人は、映画の夢やぶれてゲームに行き着いたかのように語るが、ゲームという未開の荒野の開拓者になる運命(=物語)であったのではないかと思わせる。彼の視線は、ゲームだけに注がれていない。物語という文化遺産をいかに語り継ぐか、人と物
語の関わりそのものを捉えて活動している。

 KONAMIを離れ、独立プロダクションを起こし、今秋には待望の新作『DEATH 
STRANDING』を発表する予定の小島氏が、どんな物語を紡いでくれるのか世界中が期待している。映画から多大な影響を受けたことで有名な小島氏だが、ストーリーテラーとして彼はどのような人物であると位置づけられるのか紐解くことで、最新作へ期待できることを探ってみよう。

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