向井理の働き方は変わるのか 『わたし、定時で帰ります。』弟・桜田通との仲違いの真相が明らかに

『わた定』向井理の働き方はどう変わる?

 新卒入社は、社会人の赤ちゃんだ。まるでカモのヒナのように、親となる上司や先輩の行動を追尾する。“ついていけなければ、社会人として生きていけないのではないか”という「すりこみ」が起こる。もちろん、いきなり親と同じようには飛べない。だから、焦って“早く上司や先輩のようになりたい”と、必死になるのだ。

 当然ながら、成長には負荷が必要だ。だが、その負荷が自分にとって乗り越えられるものなのか、無謀な取り組みであるかどうかの判断も、ヒナにはできない。フォームもわからないのに、いきなり100キロのバーベルを持ち上げれば腰を壊すのと同じくらいシンプルに、新人がやり方もわからずにキャパオーバーの負荷をかけ続ければ壊れてしまう。

 だから、教育係が必要なのだ。明らかに体をおかしくするフォームになっていないか。かかっている負荷は、適度な挑戦になっているか。客観的にジャッジをする存在。しかし、親のように上司や先輩を信頼して、必死に「生き残りたい」「期待に応えたい」とついてくるヒナを、まさにカモとして利用する組織もある。現実には、結衣のような教育係がいない会社も少なくない。

 そんなときは、周囲の誰かが、親の後ろ姿だけではなく、もっと視点を上げるように気づかせてあげなければならない。世界は、ずっと広いということを。親と同じように飛べなくても、生きていく方法がきっとあるのだということを、気づかせる誰かが。

 柊は、「たまにはいいよね」と会社をズル休みした結衣に、「死」ではなく「休む」という選択肢があることを知った。もしかしたら、今働くことに悩んでいる人にとって、このドラマそのものが、柊にとっての結衣のように、広い世界を教えてくれるきっかけになっているのかもしれない。

 また、このドラマは決して「プライベート返上で仕事を頑張りたい派」も否定はしない。ただ、しっかりと休まなければ、晃太郎のように「仕事しかない人間」になってしまう。それは、晃太郎が結衣を何よりも大事に思っていたのを知っていた柊だからこそ、仕事のせいで婚約がダメになってしまったことを、悔しく思うがゆえに飛び出した言葉なのだろう。

 人は、生きるために働く。だが、頑張り方を間違えると、仕事に人生を壊される。だから、いつも視点は高く、客観的に。自分は一体、誰と飛んでいるのか。どこを目指しているのか。ペースに無理はないか。そして、仲間たちは疲弊していないか……頑張り過ぎて、大事なことを見失わないようにしようと思わせてくれる回だった。

 次週は、いよいよ最終回。パワープレイでチームをかき乱す福永に結衣はどう立ち向かうのか。「考えてみます」と言った来栖に、結衣や柊の思いは届いたのか。「何もわかってなかった」と反省した種田の働き方はどう変わるのか。そして、結衣と巧(中丸雄一)との結婚の行方は? 残り1話で描ききれるのかとソワソワするほど、見どころが盛りだくさんだ。願わくば、登場人物それぞれの、そして視聴者1人ひとりにとって「自分らしい」働き方=生き方が見つかるラストになるように。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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