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『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』なぜ圧倒的な美しさを獲得できた? 作品のメッセージを考察

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史上空前の美しさを持つゴジラ映画

 青白く輝く光の柱が暗雲を貫き、雷撃が中空を駆け抜ける。哀れで無力な人間たちは、巨大な生物たちの強大な力のぶつかり合いに吹き飛ばされ、蹂躙されていく。そんな地獄のような世界が、おそろしく荘厳に、美しく描かれていく。かつて、これほどまでの恍惚を味わえる“怪獣映画”があっただろうか。

 今回のハリウッド(レジェンダリー・ピクチャーズ)版ゴジラ第2作は、メインとなるゴジラ以外に、日本でおなじみの怪獣たちであるキングギドラ、モスラ、ラドンらが登場し、熾烈なバトルを繰り広げる一大巨編となった。内容は、東宝映画『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)を彷彿とさせるが、その題名は、東宝第1作『ゴジラ』(1954年)がアメリカ向けに編集された、“Godzilla, King of the Monsters!『怪獣王ゴジラ』(1956年)”と同じく、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』となった。

 言うまでもなく、“ゴジラ”は日本映画を代表するビッグネーム。そのブランドを借りたアメリカ製『ゴジラ』は、日本をはじめ世界のゴジラファンから、厳しい目で見られるケースが少なくない。なかでも、最初にアメリカでリメイクされたローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』(1998年)は、「こんなものはゴジラじゃない、“GOD”を抜いた、ただの“ZILLA(ジラ)”だ」と言われたり、最低リメイク賞を受賞、いまだにファンの多くから忌み嫌われ続けている。

 だが、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の監督・脚本を務めたマイケル・ドハティは、自称する通り、子どもの頃からの筋金入りのゴジラファン。本作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』は、東宝特撮映画に心酔する、『シン・ゴジラ』(2016年)の庵野秀明監督と同じく、ゴジラファンによるゴジラ映画なのである。ここでは、そんな本作が描いたメッセージとは、いったい何だったのか、そして、なぜ圧倒的な美しさを獲得できたのかを明らかにしていきたい。

かつてない東宝シリーズへのリスペクト

 本作は『三大怪獣 地球最大の決戦』以外にも、多くのシリーズ作品からの引用が見られる。例えば、今回初登場する三本首の怪獣、キングギドラが「モンスター・ゼロ」と呼称されるのは、『怪獣大戦争』(1965年)における“X星人”の表現である「怪物ゼロ」を踏襲しているし、怪獣たちを文明的な装置によって操るというアイディアも、この作品から着想を得たものだろう。また戦闘においては、『ゴジラvsキングギドラ』(1991年)を想起させる描写もある。さらに、自然環境と人間の公害を中心に据える題材は『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)、悪魔的最終兵器の存在や、日本の研究者“芹沢博士”が重要な役目を果たすという展開は、第1作『ゴジラ』を基にしている。

 また今回はスコアの中に、伊福部昭や古関裕而の楽曲がアレンジされているのも特徴だ。とくに、ゴジラシリーズに連綿と受け継がれてきた伊福部による畢生のテーマ曲は、過去のゴジラ作品に精通していればいるほど、この境地に達する楽曲を作ることが、いかに困難なのかということを知っているはずである。だからこの曲や、そのフレーズを東宝のシリーズは手放せず、当然『シン・ゴジラ』でも使用されていた。本作では比較的大胆なアレンジが加えられているとはいえ、ドハティ監督もやはり、ゴジラファンとして同じ思いだったのではないだろうか。

 このように、東宝のいままでのシリーズから様々な要素を抽出し、それらを材料に新たに組み上げたのが本作なのである。ここでは、ゴジラという題材を使って何かを表現するというよりは、“ゴジラ映画そのものを描きたい”という欲望が優先されているように見えてしまう。

 アメリカの映画評論家の評価が集められたサイトによると、本作は半数以上のアメリカの批評家から否定的な評価を受けているようだ。面白いのは、対照的に観客からは大きな支持を受けているという点である。このような結果になったのは、作り手側があまりにゴジラ映画に耽溺し過ぎているきらいがあり、脚本においても、映像表現においても、バランス感覚が失われているという見方がされているからのように思われる。

 とはいえ、だからこそ、そこにはほとばしる情熱と、作り手の大いなる喜びが溢れているともいえよう。その想いの大きさは、ファンはもちろん、東宝シリーズをほぼ知らないようなアメリカの観客にも、何か感じるところがあったのではないだろうか。本作はテクニックを超えた、感性や感情に訴えかける部分を持った作品なのである。冷静に頭で判断するような批評家には評価し得ない領域での“何か”が、そこに渦巻いているのである。では、それは何なのか。

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