ジェームズ・ガンはなぜ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』新作に復帰できたのか?

ジェームズ・ガンはなぜ復帰できたのか?

 朝起きたら、ジェームズ・ガンが復帰していた。こんなに素晴らしい目覚めはないだろう。日本時間3月16日の早朝、過去の不適切ツイートで米ディズニーから解雇されていたジェームズ・ガンが、大人気シリーズ最新作『Guardians of the Galaxy Vol. 3(原題)』の監督に再起用されることになり、日本でも、Twitterで「ガン監督」「GotG」などがトレンド入りするなど、祝福ムードに包まれた。

 解雇騒動を簡単にまとめると、事の発端は昨年7月。右派のコメンテーターのジャック・ポソビエックらや、右翼メディアのThe Daily Callerが、反トランプとして知られるガンの過去ツイートを掘り起こしたことが始まりだった。ガンの投稿は、米ディズニーに雇われる前の2008年から2012年の間のもので、内容は小児性愛や人種差別に関するジョーク。それらは、ガンがトロマ(Z級のナンセンスな映画の製作会社)出身であることを考慮しても、擁護しがたいものだった。この騒動を受け、米ディズニーは、彼の解雇を発表。

 しかし、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の絶大な人気や、直接的な被害者がいなかったこと、ガンから謝罪があった点を考慮すると、米ディズニーの対応は納得できるも厳しく、出演者やファンは猛反対。主人公スター・ロード役のクリス・プラットらキャストたちが、投稿を擁護しないと前置きしながら、「わたしたちはジェームズ・ガンを全面的に支持します」「本作が持つ“救い”というテーマが今よりも現実問題に直結することはないでしょう」と声明文を出し、オンライン署名サイト「Change.org」には再雇用を願う35万の署名が集まるなど、大きく話題となった(参考:クリス・プラットら、ジェームズ・ガン解雇に声明 「再び共に働けることを楽しみにしています」)。

 あれから8か月、なぜ今になってガンは戻ってきたのか。この復活劇の裏には、度重なる話し合いが行われていたという。Deadlineによれば、ウォルト・ディズニー・スタジオのCEOアラン・ホーンは、ガンの謝罪と今後の対応を聞き、針路を変更したのだそう。ガンは騒動後、ディズニーを責めることなく、「これまでの人を傷つけるユーモアについて謝ります」「わたしはかつて攻撃的なジョークを言ってきました。もうしません」などTwitterを通して真摯に反省の意を表明し、解雇を重く受け止めていた。

 再起用を受け、ツイートを掘り起こしたポソビエックは、「ロザンヌ・バーがABCに復帰する発表を、いつ期待したら良いの?」とTwitterに皮肉を投稿。ロザンヌ・バーとは、オバマ前大統領の上級顧問を務めたバレリー・ジャレット氏に関する人種差別的ツイートをした女優で、これにより主演を務めた米ディズニー傘下であるABCの人気コメディードラマ『ロザンヌ』が打ち切られた。同番組は全米視聴率1位で、大きな広告収入源となるはずだったのにも関わらず、米ディズニーはレイシスト発言を許さず、バーの謝罪も聞き入れなかった。

 一見ガンと似たようなケースにも見えるが、「過去」を掘り起こされたガンに対し、バーの場合は「現在」を差別し、さらには番組キャストやスタッフの支持が大幅に下がったのが痛手だった。また、今回のオルタナ右翼によるツイート発掘は、反トランプであるガンを潰す目的も含まれており、これを認めてしまえば、政治的思想が異なる相手を社会的に潰す方法の1つが出来上がってしまうため、ここでストッパーがかかったことは良かったように思う。

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