『大奥 最終章』インタビュー
木村文乃が明かす、“女同士の争い”に隠された『大奥』の魅力 「“家族”を最後のテーマに」
2003年に菅野美穂主演の連続ドラマとしてスタートした『大奥』を皮切りに、これまで実に3本の連続ドラマと6本の単発ドラマ、1本の映画と舞台を生み出したフジテレビが放つ人気シリーズの『大奥』が、『大奥 最終章』として完結を迎える。
最後の舞台に選ばれたのは、暴れん坊将軍として知られる8第将軍徳川吉宗の時代。徳川御三家出身としては初めて養子として宗家を相続し、第8代将軍に就任して才腕を振るった吉宗には、内助の功を貫き通した側室・久免(くめ)がいた。紀州藩から吉宗とともに江戸城に入り、大奥の洗礼を受けることになる久免役でシリーズ最後の主演を務める木村文乃にインタビュー。シリーズの魅力である女同士のバトルについてのみならず、本作のテーマが持つ意味にも触れた。
「パンドラの箱を開けるような面白さ」
ーー人気シリーズ、最終章の主演です。
木村文乃(以下、木村):ご縁をいただいて、たまたま名前が真ん中にあるだけの話で、役柄としても私自身としても大奥の中に入れてもらったという感じです。現場は林(徹)監督という絶対的なリーダーのもと、いい緊張感と和気あいあいとしたチームになっています。撮影が始まってから2週間ほどして、吉宗役の大沢たかおさんがいらしたのですが、そのときはみなさん、「殿がきた!」と色めきだっていました(笑)。実際の大奥もこんな感じだったのかもしれませんね。
ーー久免は大奥でいじめられながらも、子どもを優しく見守ったり、恋敵にも心を寄り添わせることのできる、芯が強くて柔軟な女性ですね。
木村:そうして生きてこられたのは、吉宗、上様が優しかったというところが大きいと思います。変に“殿さま殿さま”していないですし、家族であることをとても大切にされている。そこに支えられて、久免は優しくいることができたんだろうと思います。
ーー久免さんは80歳過ぎまで生きられたそうですね。
木村:はい。演じさせていただいて、性格的にもまれな人だなと思いました。嫌なことを排除しないんです。嫌なこともまずは受け入れて、よくなるかどうなるかやってみようと。とりあえず動いてみるタイプの女性。普通はもしも浮気をされて子どもができたら、そこは排除となるのが普通の女性の感覚だと思うんですけど、上様のお子だし、いっしょに家族になって楽しみましょうよと、行動しようとする。殿と子どものために生きると決めているからこそ、マイペースでいられる人なのだと思います。
ーー『大奥』というと、豪華絢爛なイメージです。今回のお衣装は?
木村:総額1億円超えだそうです! 私だけで23ポーズあるので毎日衣装を変えています。ファッションショーのようですね。史実の吉宗は質素倹約を掲げていた殿なのに、『大奥』作品の中でその妻は毎回衣装を変えているぞなんて笑い話も飛び交ってますが(笑)、大奥といえば衣装も見どころのひとつなので、(今回の撮影所である)東映の底力を見せていこうと、ノリノリで楽しんでいます。
ーー木村さんはもともと姫役をやりたいと思っていたそうですね。実際に姫となり、ファッションショーのような毎日を過ごされていかがですか?
木村:大変です(笑)。汚してはいけない衣装ばかりですし。でも京都のスタッフさんは慣れていらっしゃるので、こちらの負担がないように動いてくださり、助けていただきながら頑張っています。あと、浜辺(美波)さん演じる竹姫様は、大奥では初めての由緒正しきお姫様とのことで、そのお衣装が1ポーズ2000万円だと聞いています。総額1億円超えと言われている製作費の2000万が実は竹姫様のお衣装。すごいです。
ーー過去の大奥シリーズに抱いているイメージを教えてください。
木村:やっぱりドロドロした女性同士の争いが一番の見どころですよね。そして大奥という、みんなが名前は知っている場所だけれど、表には出てこないドロドロの部分を見られるパンドラの箱を開けるような面白さがある。同時に女性が登り詰めていく痛快さだったり、隠れた母性の大切さだったり。それと『大奥』シリーズの見どころといえば火事。
ーー今回の最終章でも出てきますね。
木村:はい。この時代、火事は致命的なことではありましたが、今回、丹波市のご協力があり、実際にセットを燃やしながら撮影するという、東京では絶対にできない撮影をやらせていただきました。本物の炎の力はすごいです。そういう意味でも「フジテレビ開局60周年特別企画」に相応しい、力強くおもしろい映像になってるんじゃないかなと思います。
ーーしかし撮影は大変だったのでは?
木村:そうですね。一歩間違ったら危険なことが起きかねないので、絶対的に安全なようにと細心の注意を払いながら……。いや、「やれー!」みたいな感じだったかな(笑)。これまでの作品でも、私は割と大変なことでもやることが多かったので、私自身も特別に身構えてはいなかったですかね。でも普通に考えると、着物を着たまま女性が水を被って火のなかに行くとか、大変なことですよね。水を被る桶を持ち上げるだけでも腕力が必要ですし。でもカットがかかった瞬間に、監督が「女優や!」と叫んで来てくれたので、それを見てほっとしました。