『シャザム!』はどんな作品に仕上がっているのか? デヴィッド・F・サンドバーグ監督に聞く
「一番大切にしたのは作品のトーン」
ーーDCEUで前作にあたる『アクアマン』は、あなたが監督を務めた『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』の製作を担当したジェームズ・ワンが監督を務め、大ヒットを記録するなど大成功を収めましたが、今回本作を手がけるにあたって彼とは何か話をしましたか?
サンドバーグ:実は『アクアマン』も『シャザム!』と同時に制作されていて、彼らはオーストラリアで撮影していたから、ほとんど話す時間がなかったんだ。ただ、撮影が終わって編集の段階で、『アクアマン』の編集の現場を訪れて編集作業を見せてもらうことができた。特に、『アクアマン』の水中の戦闘シーンと『シャザム!』の飛行しながら戦うシーンの撮り方、やり方が似ているところがあるから、そういうところを話し合ったりはしたよ。
ーーシャザムはマーベルにおけるデッドプールのような立ち位置に見えるという声もありますね。
サンドバーグ:たしかにユーモアという点で、『デッドプール』はとても面白いし、笑えるから好きだけど、あの作品でやっているような、第四の壁、つまり観客に自分たちがこの世界にいるとわかるような、直接カメラ目線で話しかけたり、起きていることをネタにしたりするようなことは『シャザム!』ではやりたくなかったんだ。もっと誠実なトーンで作品を作りたかったし、『デッドプール』みたいなネタの作り方はすごい面白いんだけど、キャラクターの感情の深いところまで観客に感じてもらえるのか、伝えられるのか、より難しくなってしまう。だからこの作品では軽妙になりすぎずにドラマを描きたいと思ったんだ。この作品は、ビリーが母親を探す物語でもあるし、胸にぐっとくるような感動するシーンも入っている。だからカメラ目線のようなことは一切やっていないし、伝統的なドラマのような作り方に近いよ。
ーーなるほど。演出面では、これまであなたが撮ってきたホラー映画的な要素は、今回の作品にも反映されているように感じました。
サンドバーグ:そうだね。今回はホラーの要素を少しだけ滲ませるようにしたんだ。すべての人に観てもらえる作品にしたかったから、あまり怖くしすぎてはいけないという思いがあったからね。自分も大好きな『インディ・ジョーンズ』とか『ジュラシック・パーク』なんかは家族で観られる映画だけど、ちょっと怖いところもあったりする。そのぐらいを目指していたんだ。自分にとっては、ホラータッチを感じられる作品にできたことは楽しいことだったよ。
ーー確かに、想像以上にコミカルな要素が満載だったこと、また子供たちが中心となった物語もいい意味で予想を裏切られるサプライズでした。本作において最も大事にしたことはなんでしょう?
サンドバーグ:一番大切にしたのは作品のトーンなんだ。ユーモアがしっかりとありつつも、ドラマもきちんと成立させたいから、軽くなりすぎないようにというバランスがとても重要だった。ビリーは養子で母を求めているというストーリーがあるから、ドラマも誠実に描いていきたかったんだ。だから、笑いに寄りすぎず、ドラマの重さがバランスよくあることをとても大切にしたよ。でも、「これは面白い」と思ったらやっぱり入れたりなんかして、だからこそバランスというのは気を付けなければならなかったんだよね。
ーーそういう意味でも、今回の作品は、あなたのフィルモグラフィにおいても新たな一歩となる作品になりそうですね。
サンドバーグ:確かにこれまでの2作品とは少し毛色の違う作品になったね。でも、もとからヒーロー映画は大好きで、いつかやってみたいと思っていたから、これからはもっといろんな種類の作品を作っていければというのが僕の願いだね。ひとつ言えるのは、ジェームズ・ワンは『ワイルド・スピード SKY MISSION』を撮ったけど、僕は車の映画が好きじゃないから、そういうのは絶対やらないよ!(笑)
(取材・文=宮川翔)
■公開情報
『シャザム!』
4月19日(金)全国公開
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
出演:ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、ジャック・ディラン・グレイザー、マーク・ストロング
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:http://shazam-movie.jp/