>  > 『映画ドラえもん』最新作の“ロマン”とは

『のび太の月面探査記』は「映画ドラえもん」の集大成 “SFのロマン”を探求する物語に

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 「学校の裏山で見つけた古井戸が地底人の出入り口だと主張し、スネ夫から馬鹿にされたのび太。そこでドラえもんが出したひみつ道具は“異説クラブメンバーズバッジ”。現代科学では否定されている“異説”を、バッジを付けた人だけが体験できるという道具だ。それを使ってのび太とドラえもんは地底に王国を作り出し、ジャイアンとスネ夫をそこへ連れて行くのだが、2人は地底王国の存在をマスコミや不動産業者に伝えて大騒動に発展。のび太とドラえもんは地底の暮らしを守るために、バッジを埋めることを決める」。

 これは現在公開中の「映画ドラえもん」第39作目『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の原案となった、単行本23巻収録のエピソードのあらすじである。この筋書きの舞台を地底から月へと置き換え、そして常に“友情”がテーマに据えられる大長編の性質通りジャイアンとスネ夫は秘密を守る仲間として描き直され、他にも様々な要素を加えて作り出したのが今回の映画というわけだ。これまでも幾度となく藤子・F・不二雄が存命した時代に描かれた短編エピソードをふくらませて映画にするという選択肢がなされてきたが、今回の題材はその中でも極めて重要なものである。

 というのも、この物語の主たるテーマである“異説”というもの自体が「ドラえもん」という作品、それどころか藤子・F・不二雄作品において欠かすことのできないものであるからだ。地底に大きな空洞があって恐竜が生きていたり、別の文明が存在している、宇宙人がいる、未知の動物や人類未踏の秘境が存在している。さらにはドラえもんという存在そのものであったり、彼がやってくるタイムマシンに至るまで、藤子・F・不二雄における「SF」=「すこしふしぎ」とは、現実の世界では“異説”と言われるものの奥に秘められたロマンを見
つけ出し、それを探求していく。

 80年代後半に科学雑誌に連載され、その後単行本化された『藤子・F・不二雄の異説クラブ』という書籍がある。タイトルの通り、この「異説クラブメンバーズバッジ」がその核として紹介され掘り下げられているのだが、そこにはこのように書かれている。「たとえその99パーセントまでが科学的に否定された異説であっても、まだ1パーセントの可能性が残されているのであれば、その1パーセントのロマンに夢を遊ばせてみよう」。この言葉、この発想はすべての「ファンタジー」というジャンルに応用することができるのではないだろうか。

 科学や現実の中に埋没させられてしまった想像力こそがファンタジーやSF、“すこしふしぎ”の源となり、いずれもその前提に極めて現実的なものが横たわることで、魅力が増していく。現実と並行に魔法世界が存在する『ハリー・ポッター』、おもちゃたちが生きて動いているがそれを人間に気付かれてはいけない『トイ・ストーリー』、また『ドラえもん』でもひとつひとつのエピソードに現実世界に向けた教訓が存在している。つまり“異説”が“定説”として自然とそこにあるのではなく、“異説”が“定説”のように見えていきながら、結果的に“定説”になり得ないまま“異説”として現実世界へと波及していく。このふたつの関係が重要なのであろう。

      

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