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『スパイダーマン:スパイダーバース』に心を揺さぶられる理由 ストーリーや画期的な演出から探る

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 第91回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞したのは、マーベルコミックスの有名ヒーロー、スパイダーマンの活躍を描いた、『スパイダーマン:スパイダーバース』だった。世界で大ヒット作となったのはもちろん、内容についてもとにかく評判が良く、すでに観た観客からは絶賛の声が多く、「実写を含めたスパイダーマン映画の最高傑作」との意見もあがっている。

 スパイダーマン映画といえば、現在、大河のようになったアメコミ映画ブームの流れの源になったといえる、2002年からのサム・ライミ監督による『スパイダーマン』シリーズも含まれるのだ。それを超えたというのか。しかし、実際に本作『スパイダーマン:スパイダーバース』を 観てみると、確かにそのような意見が出るのも納得できるのだ。ここでは、なぜここまで本作が支持され、心を揺さぶられるのか、ストーリーや画期的な演出などを追いながら考察していきたい。

かつてないヴィジュアルのアニメーション

 アカデミー賞長編アニメーション賞の対抗馬だったのが、天才監督ブラッド・バードの『インクレディブル・ファミリー』である。40、50年代の古いハリウッド映画を想起させるような風格と、キレのあるアニメーションならではの演出、そして観客を楽しませる趣向の数々。監督の冴えと、ピクサー・アニメーション・スタジオの技術による洗練の極みに到達したと思わせる完成度は、もはや“完璧”と言いたくなるほどである。

 総合的な作品の質や洗練を問うなら、統一感を持った美しさのある『インクレディブル・ファミリー』に軍配が上がるかもしれない。だが、『スパイダーマン:スパイダーバース』は、それを凌駕する新しさを持っている。それは、3DCGに2Dの感覚が複雑に混じり合うような、かつてない幻惑的なヴィジュアルだ。

 キャラクターたちの“なめらかでない”カクカクとした動きは、1秒あたりの動画の枚数にあたる“フレームレート”を意図的に通常の劇場用アニメーションの半分ほどに落とすことで生まれる。本作は、観客がこれを“作りもの”であると意識させてしまうことをおそれない。むしろアニメーションであることを声高に叫んでいるようにすら感じられる。

 さらには、まるで画面がアメリカンコミックの1ページであるかのように、ときにマンガのコマのように割られ、キャラクターの心情が文字として表示される。そしてスパイダーマンの危険を察知できる能力“スパイダーセンス”が、漫画的な記号によって表現されるなど、3D表現のなかに平面的な表現が被さってくる。

 コミックへの接近は、驚くほど周到に行われている。ページに印刷されたドット状のインクによって構成される。コミックの独特な風合いを、ここでは拡大・誇張し、ある意味でコミック以上にコミック的であろうと自己主張を始める。それは、同じようにコミックの特徴を強調し平面の魅力を追った、ロイ・リキテンスタインのポップアートをも想起させられる。本作の昇華された表現は、作中に配されたウォールペイント、ヒップホップなどのストリートカルチャーとも合流し、もはやここにおいて、コミックやアニメーションが、オシャレでかっこいいと思える存在にまでなっている。本作はその意味でも、非常に重要な価値を生み出しているのだ。

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