YouTuberがドラマ界を占領!? TVドラマから感じる、SNSに対する世間の関心の肥大化

 そんな状況そのものと対峙し、熱いメッセージを残そうとしたのが『3年A組』だ。

3年A組 ―今から皆さんは、人質です― [Blu-ray BOX]

 女子生徒・影山澪奈(上白石萌歌)の自殺の真相を究明するためにクラスメイト全員を教室を閉じ込めて、教室に立てこもった教師の柊一颯(菅田将暉)を主人公とする本作は、映画『告白』や連続ドラマ『女王の教室』(日本テレビ系)といった教師と生徒が殺し合うバッドテイストの学園ドラマになるかと思われたが、話数が進むにつれて、どんどん内容が変わっていった。やがて、自殺の背後にフェイク動画を作った半グレ団体と動画作成を依頼した教師がいることが判明し、物語のスケールはどんどん拡大していく。

 最終的にどういうオチになるのだ? と固唾を呑んで見守っていたら、柊が屋上で演説。事件の模様は、マインドボイスというSNSでずっと注目されていたのだが、マインドボイスを見ている人々に対して「お前らネットの何千何万という悪にまみれたナイフで何度も何度も刺されて、影山澪奈の心が殺されたんだよ」と柊は言う。

 無数の批判コメントが表示される中、自分の意見を表明する柊。他人事のゴシップとして消費していたら、モニターの向こうにいる柊が「お前に言ってんだよ!」と、直接話かけてきたかのように感じた視聴者も多かったのではないかと思う。

 若者向け学園ドラマという今のテレビドラマでは劣勢のジャンルが高視聴率を獲得し、ちゃんと10代の若い視聴者に届いたのは、SNS被害というモチーフがそれだけ若い子にとって切実な問題だからだろう。YouTuberとSNSが当たり前のものとなったことをもっとも象徴していたドラマである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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