現地LAからアカデミー賞直前予想! 老舗映画賞が直面する、視聴行動の変化とインクルージョン
そんな2019年、栄えあるオスカー像を手にするのは一体どの作品で、誰なのか。現地ロサンゼルスの空気とともに主要6部門と日本作品がノミネートされた外国語映画部門と長編アニメーション部門について予想をしてみたい。
*赤字は当確予想、青字は次点
主演男優賞
クリスチャン・ベール『バイス』
ブラッドリー・クーパー『アリー/ スター誕生』
ウィレム・デフォー『永遠の門 ゴッホの見た未来』
ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』
ヴィゴ・モーテンセン『グリーンブック』
今年のトピックとして、批評家と観客との間のズレが大きな話題となった。その標的になったのが『ボヘミアン・ラプソディ』で、公開前の批評は散々なものだったが、蓋を開けてみると興行成績は2億1231ドル(約233億円)と好調、ゴールデングローブ賞においてドラマ部門作品賞と主演男優賞を受賞している。『ボヘミアン~』は作品賞にはノミネートされているが、性的虐待疑惑でブライアン・シンガー監督が途中降板していることから監督賞からは必然的に除外、歌曲賞も映画オリジナルに限るため選外となった。5枠中4名がオスカーの掟とも言える実在する人物を演じているが、『ボヘミアン~』擁護派票がラミ・マレックに集中すると見て、ここは彼が本命。肉体改造が十八番になりつつあるクリスチャン・ベールは、アカデミー会員の多くを占める俳優たちの同情票を集めるかもしれないが、俳優の多くが所属する全米映画俳優組合賞もラミ・マレックが受賞している。
主演女優賞
ヤリッツア・アパリシオ『ROMA/ローマ』
グレン・クローズ『天才作家の妻 -40年目の真実-』
オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』
レディー・ガガ『アリー/ スター誕生』
メリッサ・マッカーシー『ある女流作家の罪と罰』
ほぼグレン・クローズ圧勝の波が来ている。クローズの7度目のオスカーノミネーションにして、理知的で深みのある『天才作家の妻』での演技は、オスカーにふさわしい。そして何より、メリル・ストリープが欠席の今年こそ、クローズがオスカー像を手にすることができる最大のチャンスだ。オリヴィア・コールマンに勝機があるとすると、批評家に人気の『女王陛下のお気に入り』が受賞できる部門が脚本賞だけなのを気にする層の動き次第。ただし、昨年秋のオスカー戦線開始直後は飛ばしていた『アリー/スター誕生』の息切れ失速の割を食ったレディー・ガガの受賞はもはや難しいと言われている。おそらく歌曲賞は取れるだろうが、監督賞候補を逃したブラッドリー・クーパー(主演男優賞も望み薄)と傷を舐め合うしかないのか…。