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岩井俊二の“原点”がここに 『Love Letter』とシンクロする小説『ラストレター』を読む

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 岩井俊二。淡く美しい、あの世界。1990年代以降を生きた多くの若者たちが通過した何か。

 『PiCNiC』(1996)のChara、『スワロウテイル』(1996)の伊藤歩、『四月物語』(1998)の松たか子、『花とアリス』(2004)の蒼井優といった少女たちの眩しさ。そして、いつも彼女たちを前に困惑し、置き去りにされてばかりの、優しい男たち。

 岩井俊二が描く世界は美しいが、どこか閉ざされた世界でもある。『undo』(1994)の山口智子が、自分は飼うことのできない犬を散歩させている子どもたちを恨めしげに眺め、『PiCNiC』のCharaは、世界を終わらせたくて自分のこめかみに銃を当て引き金を引く。

 彼らは時に、閉ざされた世界から脱出を試みる。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(1995)の少年が、憧れの少女のために、思うままにならない世界からつかの間脱出するように。また、『スワロウテイル』の三上博史たちがニセ札と音楽で、自由を手に入れようとするように。

 岩井俊二は常に当時の若者の「今」を切り取ってきた。そして、『リップヴァンヴィンクルの花嫁』で2016年の現代を見事に切り取り寓話として昇華した。人々が「集大成」と声高に叫ぶ傑作を作り上げた彼が、新たに書き上げた物語は、自身の長編映画初監督作品である、中山美穂主演映画『Love Letter』(1995)という原点に立ち返る物語『ラストレター』である。そしてこれは、何を書いても「自分」と、初恋の女性の面影から逃れることができない中年の小説家の物語だ。

 既に松たか子、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介、庵野秀明らの出演が決まっている、岩井俊二監督・脚本・編集の2020年公開予定作品『Last Letter』の原作である。他ならぬ岩井俊二監督自身の原体験が詰め込まれているという本作は、岩井の出身地である宮城県仙台市でのロケ、庵野秀明の出演が決まっているということで、ある作品が頭に浮かぶ。

 やはり故郷山口県宇部市を舞台に、主演である、恐らくは自身を投影したかのように見える「カントク」役に岩井俊二を配し、庵野が監督した映画『式日』(2000)である。岩井俊二は、故郷・仙台で、自身の一部分を投影しているのかもしれない小説家の物語を、今度は逆に庵野を道連れにして、描こうとしているのだろうか。

      

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