ディーン・フジオカ×井浦新『レ・ミゼラブル』を通して感じる“平成の30年”の揺らぎ

『レ・ミゼラブル』が映す“平成の30年”

 弱き者を助けるため、自らの正義を貫くためにした行動が、時として罪となることがある。だが、その罪を決めるのは他ならぬ人。人が人を裁き、そして人が人を赦す。だからこそ、時代と共に、その罪は変化していくのだ。では、この30年間で大きく変わったのは何か。

 IT革命が起こり、世界とつながることができた反面、地域や家族に対する求心力は控えめになり、私たちは“個”であることに気がついた時代。“自己責任”も平成を象徴するひとつの言葉だ。未だかつて体験したことのない圧倒的なスピードで情報が行き交う日々の中で、小さな事件もあっという間に広がっていく。マスメディアが匿名報道をしたとしても、インターネットで誰もが罪人と呼ばれる人の個人情報を晒すことができてしまう世の中になった。

 もちろん、誰もが他者の権利を脅かすことなく生きていくのは理想の社会だ。技術の進歩は、これまで声が上げられない人たちのSOSが届きやすくもなった。だが、一度転んだ人が立ち上がるチャンスは……? 人はふいに過ちの落とし穴に落ちる。不条理な連鎖によって、図らずも罪を犯すこともある。情報は、受け手一人ひとりが様々な解釈をするもので、異なる見解の中には、認知の歪みも生じる。逆手にとって利用する人もいる。その結果、新たな罪へと転がっていく人がいるかもしれない。そんな危うさを孕んだ時代を私たちは生きているのだと、痛感している真っ最中だ。

 人生はいつだって理不尽だ。生まれる時代も、生んでくれる親も、育つ環境も、出会う人も……何ひとつ選ぶことはできない。なぜ生まれてきたのかも、なぜあの人が死んで、自分が生かされているのか、正直者がバカを見て、ずる賢い者が笑うのか。誰も説明ができない。それでも日々の選択の連続で、人生が切り開かれると信じて歩み続けるしかない。「選択に迷ったときのヒントを教えてやろうか」。劇中では、そんな忘れたくない言葉もたくさん出てくる。

 今この瞬間も、刻々と時は過ぎ去り、いつか振り返る時代のかけらとなって、記憶の彼方に消えていく。何のために生き、何のために死ぬのかは、自分自身しか意味をつけられない。ならば、今この瞬間を精一杯生きるために、このドラマを見ることから始めてはいかがだろうか。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
フジテレビ開局60周年特別企画『レ・ミゼラブル 終わりなき旅路』
フジテレビ系にて、2019年1月6日(日)21:00〜23:54放送
出演:ディーン・フジオカ、井浦新、山本美月、吉沢亮、村上虹郎、清原果耶、松下洸平、清水尋也、福田麻由子、長谷川京子、金子ノブアキ、富田靖子、寺脇康文、伊武雅刀、かたせ梨乃、香里奈、奥田瑛二
原作:ヴィクトル・ユゴー『レ・ミゼラブル』
脚本:浜田秀哉
音楽:吉川慶
演出:並木道子
プロデュース:太田 大、野田悠介
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/lesmiserables/

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