年末企画:久保田和馬の「2018年 年間ベスト女優TOP10」 贅沢な女優アンサンブルが確立

久保田和馬の「2018年年間ベスト女優TOP10」

 リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに加え、今年輝いた俳優たちも紹介。今回は、2018年に日本で劇場公開された邦画の作品と、放送されたドラマの中から執筆者が独自の観点で10人の女優をセレクト。第16回の選者は、単館系からアニメまで幅広く論じ、若手女優ウォッチャーとしても多くのレビュー・コラムを執筆した映画ライターの久保田和馬。(編集部)

・新木優子『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)
・石原さとみ『アンナチュラル』(TBS系)
・今田美桜『花のち晴れ〜花男 Next Season〜』(TBS系)『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)
・唐田えりか『寝ても覚めても』
・北川景子『スマホを落としただけなのに』
・桜井日奈子『ういらぶ。』
・清野菜名『半分、青い』(NHK)
・永野芽郁『半分、青い』(NHK)
・浜辺美波『センセイ君主』
・南美櫻『聖なるもの』
(50音順)

『半分、青い』(提供=NHK)

 実力派として名を馳せている女優から、期待されてきた女優の開花、はたまた彗星のごとく現れた新星など、例年にも増して様々なタイプの女優が伯仲した一年となった2018年。ひとつ一貫した共通点を挙げるとするならば、主人公たるメインヒロインのみならず、サブヒロインといわれる役回りにある女優たちも引き立て役に留まらない抜群の存在感を示し、1作品の中で贅沢な女優アンサンブルが確立される作品が多く見られたということだろう。

 一覧に挙げた作品の中では『SUITS/スーツ』や『寝ても覚めても』、『ういらぶ。』、『半分、青い』『聖なるもの』がまさにその女優アンサンブルの類であり、それぞれの作品から選出した1人、ないしは2人はその中でも特筆すべき存在であったということ(とりわけ今田美桜は『花のち晴れ』で完全にメインヒロインを凌駕する働きを見せるなど、大躍進を遂げた1年であった)。他にもこの一覧に入らなかった作品では『虹色デイズ』や『SUNNY強い気持ち・強い愛』や『今日から俺は!!』(日本テレビ系)などもそうだ。

『寝ても覚めても』(c)2018 映画『寝ても覚めても』製作委員会/COMME DES CINEMAS

 そんな大豊作な一年の中で、群を抜いた異様さを携えていた女優は『寝ても覚めても』の唐田えりかを置いて他にいない。東出昌大が一人二役で演じた“同じ顔をした男”の間で心揺れ動くヒロイン・朝子を演じた彼女は、特別巧い芝居をしているわけでもなければ、観客の心に寄り添うような古典的で明瞭なヒロイン像を演じているわけでもなく、むしろその真逆を突き進んでいく不思議な存在であった。それなのに、彼女がスクリーンに映るだけで目が離せなくなり、一挙手一投足に心が掻き乱されていく。むしろ、何だかわからない恐ろしさと危なっかしさに息を呑んで見入ってしまうといったところだ。まさに唯一無二。唐田の雰囲気があってこそ成立する役柄だったと言ってもいい。

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