トムクル骨折、ニコケイブチギレ、ソン・ガンホ巻き込まれ……2018年“おじさん映画”を振り返る
50・80、喜んで。そんなわけで、近年のアクション映画シーンでは「おじさん映画」が盛り上がっている。なお、ここで言う「おじさん」は役者の実年齢的な意味であるが、劇中で主人公が「おじさん」扱いされていることも指す。自分の家族や職場の若手にロートル扱いされたり、おじさんというだけで周囲に軽んじられたり。人生が消化試合に入り、周囲から疎まれ、軽んじられる。そんな人物が主人公になること。これこそが普通の「映画」を「おじさん映画」にするキーポイントだ。こうした中年男性の悲哀、あるいは醜態をそのまま描く映画も良い。しかし、おじさんを見くびってはいけない方向の映画にも抗いがたい魅力がある。単なるおじさんかと思いきや、それなりの人生経験があったり、実は熱い男気を秘めていたり、殺人術を習得していたり……今回はそうした方向の「おじさん映画」の2018年を振り返っていきたい。
まずは映画の都ハリウッド、アメリカ映画だ。今年もアカデミー賞常連組の中年俳優たちが、こぞってアクション映画で暴れ回った。その中でも最初にご紹介したいのが、シンドラーから事実上のスティーヴン・セガールになった男、リーアム・ニーソン主演の『トレイン・ミッション』。冒頭から会社をクビになり、人生設計がパーに。「家族にどうやって説明しよう?」トボトボと電車に乗り込む姿は、おじさんの悲哀に満ちている。そんなニーソンが巨大な陰謀に巻き込まれてしまうわけだが、ところがどっこい、彼には元警官という強いキャリアがあった。会社をクビになったばかりのおじさんが、頭脳と腕っぷしを駆使して陰謀を暴いていく姿は非常に痛快。まさに快作と呼ぶにふさわしい作品だ。
次は今年のおじさん映画の最注目作品、デンゼル・ワシントン主演『イコライザー2』。前作のラストで仕事人として本格的に活動を始めたので、てっきり続編は『シティハンター』的な、むっつりイコさんのアクション重視の作品になるかと思いきや、意表をついての人間ドラマ重視、若者との熱い触れ合いムービーになっている。デンゼルは絵の才能を持つ若者と出会うが、彼がギャングに落ちかけていることを知ると大激怒。銃を突き付けながらのマジ説教をかます。状況も言ってることも無茶苦茶だが、デンゼルの迫真の説教に首を垂れるのみ。課外授業ようこそイコライザーといった感じだが、俺も真面目に生きます!と叫びたくなること必至だ。
一方で、おじさん映画の歴史に残る狂った作品も誕生した。ニコラス・ケイジ主演『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』である。ペラッペラな教義を持つカルト団体に妻を殺された男の復讐モノなのだが……。とにかく尋常じゃないビジュアルの持ち主たちが次々と登場する。怪人大博覧会の様相を呈しているが、我らがニコラス・ケイジは、それを全て食ってしまう熱演を見せた。最高のスマイルで映画を終わらせるのは、まさに“ハリウッドの野生”(ニコケイの自伝のタイトル)。ブチギレ具合では今年最高のおじさんだっただろう。