年末企画:小田慶子の「2018年 年間ベストドラマTOP10」 牽引する人々の世代交代が進む
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、アニメの4つのカテゴリーに分け、国内ドラマの場合は地上波および配信で発表された作品から10タイトルを選出。第14回の選者は、雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当するライター/編集者の小田慶子。(編集部)
1.『おっさんずラブ』(テレビ朝日)
2.『アンナチュラル』(TBS)
3.『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ)
4.『義母と娘のブルース』(TBS)
5.『dele』(テレビ朝日)
6.『平成細雪』(NHK BSプレミアム)
7.『昭和元禄落語心中』(NHK)
8.『トドメの接吻』(日本テレビ)
9.『女子的生活』(NHK)
10 『生田家の朝』(日本テレビ)
総評
主演キャストで光っていたのは『おっさんずラブ』でブレイクを果たした田中圭を始め、『アンナチュラル』と『高嶺の花』(日本テレビ)の石原さとみ、『コンフィデンスマンJP』の長澤まさみ、『義母と娘のブルース』の綾瀬はるか、『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS)の戸田恵梨香。いずれも15年以上テレビドラマの世界で体を張ってきた30代前半の俳優であり、この1年は彼ら/彼女らが自身のキャラクターが反映されたハマり役を得て、生き生きと芝居をしているのを観るのが楽しかった。特に『おっさんずラブ』、『アンナチュラル』に顕著だったが、俳優が単純に与えられた役をこなすのではなく、作り手の一員であることを強く意識し、内容にも意見を述べて積極的に関わっていく姿が印象的だった。
制作サイドでは女性プロデューサーの活躍が目立った。『おっさんずラブ』『アンナチュラル』『あなたには帰る家がある』(TBS)は、女性のプロデューサーが海外ドラマで言うところの“ショーランナー”(題材選定からスタッフ選び、キャスティングまでを現場で指揮する立場の人)として制作した作品。女性が決定権を持って描き出す女性像は、やはり女性から見て違和感がない。現実社会では“MeToo”運動が起こり、ポリティカリー・コレクトを考えたとき、なかなか男性の作り手ではどこまでがOKでどこからがアウトか判別しにくく、タイトルやセリフなどが炎上するケースもある中、女性プロデューサーたちは、恋愛や結婚の描き方ひとつとっても女性が安心して共感できるドラマを作り出した。単純に男女比率を見ても、テレビの歴史上、これほど多くの女性プロデュサー(ディレクターも)がクレジットされた時代はかつてなく、例えば映画業界と比較しても女性登用が進んでいるという印象。その意味では、ドラマの未来は明るいかもしれない。
一方、脚本家では『半分、青い。』(NHK)で朝ドラに挑戦した北川悦吏子、『高嶺の花』の野島伸司、『anone』(日本テレビ)の坂元裕二というビッグネームがオリジナル作を発表。ただ、いずれもドラマの内容が若い世代の支持を得たとは言えず、それより下のロスジェネ世代である野木亜紀子、古沢良太の方がドラマ作家として固定ファンを集めていた。
2018年はキャスト、スタッフともに牽引する人の世代交代がいっそう進んだという印象。2019年も「面白いドラマを作ろう」というクリエイティビティを最優先した上でキャスティングをした本気のドラマが見たい。