長谷川博己、小日向文世、山内圭哉、阿部寛…… 秋ドラマの“ブラック社長”“ホワイト社長”は誰だ?
日産のゴーン元会長が逮捕されて1週間あまり。ニュースやワイドショーで報道されているとおり、彼は本当に私腹を肥やしただけの悪徳社長だったのか。いまやゴーン元会長のイメージはまるで映画やドラマの悪役のようにカリカチュアされてしまったが、現在、放送中の連続ドラマにも強烈な存在感を放つ名物社長が数人いる。
まずは連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)の立花萬平(長谷川博己)。モデルは日清食品創業者でありインスタントラーメンを発明した安藤百福で、『プロジェクトX』に出てくるような(実際に安藤は同番組で取り上げられた)熱血モノづくり社長だ。福子(安藤サクラ)と結婚した後に「たちばな塩業」という会社を作った。萬平は発明家としては才能があると認められているものの、いきなり社員を15人も雇ったり、彼らを自宅兼会社で雑魚寝させたりと、やることが行き当たりばったりすぎる。製塩で成功した後は栄養食品の開発に夢中になって、塩作りをしている社員たちのケアができず、それを反省したと思ったらかえって社員の仕事を増やしてしまうなど、とてもホワイト社長とは呼べない。ただ、今から50年以上前の実業家ということで、現代の価値観では測れない部分も。自分たち(社長の家族)だけぜいたくな暮らしをしているわけではなく、社員に住居と食事を提供しているという点を考え、ブラック度は30%ぐらいというところか。
『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の「ツクモ・クリエイト・ジャパン」九十九社長(山内圭哉)は、いかにも実在しそうな現代のカリスマIT社長である。一代でWEB制作会社を立ち上げ、社員10人以上雇うまでになった成功者。しかし、社員を怒鳴りつけることは日常茶飯事で、主人公・晶(新垣結衣)の仕事が多岐にわたりすぎているのに(ゴミ捨てやコーヒーメーカーのセットまで!)業務改善要求には応じないし、それをごまかすように中途半端な肩書きのポジションにつける。わずかな昇給で晶をこき使い、まるで彼女が自分の妻であるかのように頼りっぱなし。他の社員たちはエキセントリックな九十九に怒られると萎縮して言い訳すらできず、さらに社内に監視カメラまで設置したので、人心離れが甚だしい。九十九とは長い付き合いである佐久間(近藤公園)も、以前は「社長は社長で辛いんじゃないかなぁ」とかばっていたのに、「 (社員に)何も言えなくさせちゃうっていうのはダメだよ」と見切りをつけ転職先を探す始末だ。ただ、セクハラ発言をすることはないし、女性にばんばん仕事を任せるという良いところも。上から指示を出すだけでなく、みずから体を張って営業をしているという点も鑑み、ブラック度は70%。
そして、“エキセントリック”という点では『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』(テレビ朝日系)の天馬(小日向文世)が突出。「Felix & Temma法律事務所」の代表で政治家タイプの天馬は、顧客から賄賂(300万円!)をキャッシュで受け取って背広の内ポケットに入れるし、若い女性秘書がミスすると、赤ワインを頭からかけたりニットの胸元に注ぎ込んだりするコンプライアンス違反の常習犯。セクハラの瞬間を部下である白鳥弁護士(菜々緒)が見ているのだが、『Missデビル 人事の悪魔・椿眞子』(日本テレビ系)の菜々緒なら、天馬に回し蹴りをお見舞いしてくれるはずなのに! とじれったく思ってしまう。時代劇のようにわかりやすい悪役設定は『ドクターX~外科医・大門未知子~』シリーズ(テレビ朝日系)から引き継がれたものかもしれない。かつて自分の部下だった翔子(米倉涼子)に罪を着せ、弁護士資格を剥奪させたのも天馬の仕業であるようで、ここから最終話にかけて翔子が倒すべき相手として全面的に対決するようだ。しかし、翔子は何かしら天馬の秘密を握っているだろうし、最後にはまだ一度も姿を見せない共同代表のFelix氏が登場し、それこそゴーン元会長のように代表の座から追い落とされてしまう予感! ブラック度は100%。