ティモシー・シャラメは新時代のスター? 繊細さと“男らしさ”から逸脱した演技が評価高める理由に

ティモシー・シャラメは新時代のスター?

“境界を壊す”演技が特徴?

 グザヴィエ・ドランは「『君の名前で僕を呼んで』でティモシーを見たとき、以前から知っている人のような気がした」と語った。このように、シャラメの演技は「キャラクターと演者と観客の境界を破壊する表現」として高く評価されている。それは繊細さであり、自然さでもある。例えば『君の名前で僕を呼んで』でのシャラメを、「2017年最高の演技」と位置づけたHollywood Reporterの評論では「開始30分から彼の瞳には相反するいくつもの感情が見て取れる」と賞賛している。話題を呼んだこの作品のラストシーンが「観客も同化してしまう演技表現」の代表格であることは言うまでもないだろう。様々な「境界」をなくしてしまうこうした手腕は、薬物中毒に陥る青年を演じた新作『ビューティフル・ボーイ』でも見事に発揮されたようだ。

『レディ・バード』(c)2017 InterActiveCorp Films, LLC.(c)Merie Wallace, courtesy of A24

 アメリカ映画には「中毒者男性」が溢れている。とくにドラッグとアルコールの中毒に陥る役柄は定番中の定番だ。アカデミー賞においてもメジャーで、近年ではケイシー・アフレック(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』)やマシュー・マコノヒー(『ダラス・バイヤーズクラブ』)が中毒に陥る役柄で主演男優賞を獲得している。このような“飽き飽きされている定番の役”に挑んだからこそ『ビューティフル・ボーイ』のシャラメは才能を立証している、とLos Angeles Timesは評した。本作において、シャラメは「見たことのないドラッグ中毒者役」を披露しているのだという。一方、LAMagは、シャラメの演技が「ジギルとハイド」クリシェに陥っていない点を賞賛している。多くの役者は、中毒者の役を演じる際、健常時と中毒時をまるで別人のように区別する演技をしがちだ。シャラメはそうした区切りをせず、「いかなるときも同じ心身を持っている人間」だと感じさせる演技表現を行ったようである。こうした賞賛は、先述した「境界を壊す演技」評にもつながるだろう。『ビューティフル・ボーイ』でも、シャラメはThe Playlistから「涙を流すときすら演技しているように思えない」と驚愕され、The Guardianに「脆弱性、恐怖、攻撃性、憂鬱を行き来している」と評されている。

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