『獣になれない私たち』に出会えた喜びに乾杯! 野木亜紀子が描く“声にならない叫び”
家庭に恵まれなかった晶が、ささやかな願いだった“普通”の結婚も、暗雲が立ち込めている模様。恋人の花井京谷(田中圭)の家には、元カノ・長門朱里(黒木華)が居座り続けている。もう4年もその状況が続いているというが、一体どうなっているのか。第2話以降へのフックも十分だ。マンションの契約更新が迫っていることを伝えても、京谷から結婚を進める言葉は出てこない。「お風呂入ろう」と、晶は話題を変えて、また笑ってやり過ごす。京谷の母・千春(田中美佐子)との挨拶はセッティングされるものの、結婚は“いつか”のまま。千春からの強引な連絡先交換も「断れないじゃん」と、笑うしかないのだ。
そんな晶の笑顔を、多くの人は“大丈夫”のサインだと認識する。奇抜なブーツを「どこにアピールしてんの?」と聞く京谷のように、そこに込められた本質的な想いよりも、わかりやすいアイコンに目がいくものだ。社会から浮かない服装、その場を取り繕う表情、誰かに愛してもらうための言葉……大人になるほど、そうしたアイコンが正解になっていく。気づけば、感情や本能で生きる“獣”になることに、だんだん勇気が必要になる。
だが、その晶の張り付いた笑顔を「キモい」と言い切った松田龍平扮する根元恒星のような人も世の中にはいる。そして同じように「バカになれたらラクなのにな」と思っている人が、少ないかもしれないけれど、必ずどこかにいるのだ。その希望をくれただけでも、このドラマの存在価値は大きい。
無論、晶はラクにはなりたいが、人に尻拭いをさせて平気な顔でいるようなバカになりたいわけではない。だからこそ、まずは好きなブーツを履いて闘うのだ。革ジャンを羽織り、業務改善要望を社長に突きつける。サングラスをしているのは、目の奥の少しの動揺も見せないためだろう。小さな声を代表する晶の宣戦布告。誰かに求められる私から、自分の“好き”を信じて生きていく私へ。それは、自分への「ラブかもしれないストーリー」。自分を愛してこそ、初めて人を愛せるのだから。
水曜10時、またもや毎週楽しみになるドラマに出会えた喜びに乾杯したい気分だ。第2話は、お気に入りのクラフトビール片手にテレビの前にスタンバイしたい。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
『獣になれない私たち』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:新垣結衣、松田龍平、田中圭、黒木華、菊地凛子、田中美佐子、松尾貴史、山内圭哉、犬飼貴丈、伊藤沙莉、近藤公園、一ノ瀬ワタル
脚本:野木亜紀子
演出:水田伸生
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:松本京子、大塚英治
協力プロデューサー:鈴木亜希乃
制作会社:ケイファクトリー
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kemonare/