『グッド・ドクター』好調支えるフジ木曜劇場への信頼感 『ゆがみ』『となかぞ』『モンクリ』の功績
『グッド・ドクター』に追い風が吹いている。視聴率は第1話11.5%、第2話10.6%、第3話11.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と3週連続で2桁超え。フジテレビの新作ドラマでは、2015年6月15日に放送された『ようこそ、わが家へ』最終回(15.0%)以来の15%超えも見えてきた。
『グッド・ドクター』は、主演・山崎賢人の繊細な役作りや、ストレートに心を揺さぶるストーリーを称える声をよく見かけるが、実際は「全ての人々に響くタイプの作品」ではなく、「好みの差がはっきり分かれるタイプの作品」という印象がある。
「コミュニケーションに難があるが、驚異的な記憶力を持つ」サヴァン症候群という主人公の設定、命を救う相手がかわいらしさと弱さで感情移入しやすい子供であること、韓国ドラマ原作らしいハッキリとした対立構図。いずれもドラマ業界では禁じ手に近い設定であり、これらが引っかかる視聴者は拒否反応を起こしやすい作品とも言える。
ここまでの視聴率を獲得しているのは、『グッド・ドクター』の魅力だけでなく、『木曜劇場』そのものに活気が戻ってきたからではないか。
視聴率のベースラインは6%台まで下降
たとえば、ここ3年あまりの平均視聴率を振り返ってみると、2015年は『問題のあるレストラン』9.3%、『医師たちの恋愛事情』8.5%、『探偵の探偵』8.1%、『オトナ女子』8.7%。
2016年は『ナオミとカナコ』7.5%、『早子先生、結婚するって本当ですか?』5.6%、『営業部長 吉良奈津子』7.1%、『Chef ~三ツ星の給食~』7.1%。
2017年は『嫌われる勇気』6.5%、『人は見た目が100パーセント』6.4%、『セシルのもくろみ』4.5%、『刑事ゆがみ』6.5%。
2018年は『隣の家族は青く見える』6.3%、『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』6.2%。
年を追うごとに下がり、昨年から6%台がベースラインになっていたのだが、一方で『刑事ゆがみ』『隣の家族は青く見える』『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』と3作連続で視聴者の心をがっちりつかんでいた。
実際、今年に入ってから、「ネットメディアは低視聴率報道ばかりしているけど、『木曜劇場』はいいドラマばかり」「刑事モノのシリーズばかりのテレ朝や、焼き直しのようなドラマばかりの日テレより面白い」という声は少なくない。
「視聴率なんてどうでもいい」という視聴率アンチや、「自分の見ているドラマはこんなに面白い」という思いもあってか、上記3作の視聴者は積極的にSNSでポジティブなコメントを発信していた。
『木曜劇場』、引いてはフジテレビのドラマそのものが見直されはじめている状況で、ストレートなテーマと分かりやすい物語が武器の『グッド・ドクター』が放送されたのは、まさにグッドタイミング。やはり『グッド・ドクター』だけでなく、『刑事ゆがみ』『隣の家族は青く見える』『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』で視聴者の信頼を勝ち取ったスタッフとキャストの成果に見えるのだ。
ちなみに2014年の『木曜劇場』は、『医龍4~Team Medical Dragon~』12.1%、『続・最後から二番目の恋』12.9%、『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』13.9%、『ディア・シスター』11.3%。現在、平均視聴率11.3%の『グッド・ドクター』は、4年前のベースまで戻った感があるだけに、今後も信頼を損ねない制作スタンスが求められている。