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『おっさんずラブ』の魅力はなんだったのか? 私たちに教えてくれた“壁”の乗り越え方

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 4月クールのテレビドラマの中でSNSを中心に最も大きな話題を呼んだ深夜ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が最終回を迎えて1週間と少し経った。番組終了後も、公式LINEスタンプの販売、書籍・DVDの販売決定など、ファンの熱を冷めさせない話題に事欠かなかったこともあるが、未だにTwitterやネットニュースなどで『おっさんずラブ』の文字を見ない日がないほどの人気ぶりである。

 そこまで多くの人を虜にした『おっさんずラブ』の魅力はなんだったのか。もちろん、InstagramなどSNSを使ったユニークな宣伝方法、そもそもの「ボーイズラブ」というジャンルの人気など言及すべき側面は多くあるだろう。そして、田中圭、林遣都、吉田鋼太郎、眞島秀和など演技力に定評がある優れた俳優たちの、知られざる魅力がふんだんに散りばめられ、炸裂したドラマでもあった。

 だが、なによりこのドラマは、現代社会を生きる私たちが人を好きになることの難しさと素晴らしさを、たっぷりの笑いとともに教えてくれた。

 このドラマの大きな魅力の1つは、彼らが日常の多くを過ごす会社「天空不動産」の描き方だ。部長である黒澤武蔵(吉田鋼太郎)、主任の武川(眞島秀和)、春田創一(田中圭)、牧凌太(林遣都)の4人がそれぞれに同性同士の社内恋愛でドタバタしていることはもちろんのこと、新入社員のマロ(金子大地)やまいまい(伊藤修子)など愛すべき強烈すぎるキャラクターには、「どういう会社なんだ」とツッコミを入れずにはいられない。だが、その中で特に物語の中心に登場することもなく、本当に現実の会社にいそうな雰囲気で佇み、リアクションをとる女性スタッフ役・アッキー(真木恵未)の存在がこの会社を現実世界へと繋ぎとめる。

 初回の冒頭に描かれるのは、かっこよく指揮をとる黒澤部長と、いつも大きく声を張ってチームを盛り上げようとする武川主任、営業成績が伸び悩んでいる中堅社員・春田、「新規物件売れちゃいました」と声高に叫ぶ新入社員のマロと、バリバリの「お仕事ドラマ」でも始まりそうなイメージだ。彼らは、それぞれに恋に暴走するからコメディになるのであって、いたって普通に働くサラリーマンなのである。

 『おっさんずラブ』はとにかくシャワーシーンと海のシーンが多い。水が噴出するシャワーヘッドのショットの後は、排水溝に流れていく水の音や、蛇口を閉めた後の水道から水が少しだけ零れる音が示される。さらに言えば初回の、武蔵が春田を隠し撮りした写真のファイルを春田が見つけてしまう場面のすごい勢いでペットボトルの水が噴出し、その最後の1滴がちょろっと零れるその感じが、次のトイレで春田に武蔵が急接近する場面の、春田が用を足す音に繋がるという一連の流れも同じだ。もちろん牧が言うところの「謎のいいカラダ」である田中圭や、濃厚な哀しみの表情を浮かべながらシャワーを浴びる吉田鋼太郎のサービスショットという意味でも必見ではある。だがこれは、それぞれの役割を演じなくていい、体裁を整えなくていい、1人になれるシャワールームでしか本心を露わにできない男たち、いわば「会いたくて会いたくて震えちゃった」男たちの思いが溢れて、外側に沁みだし、海の傍での告白といった形で最終的に昇華するという一連の流れを描いたものでもある。それは一概に男たちだけの話ではない。春田への感情を募らせるちず(内田理央)も、夫への思いを簡単には捨てきれずにいる蝶子(大塚寧々)も、恋をする登場人物全てに言えることだ。

      

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