音楽がストーリーそのものに 『グレイテスト・ショーマン』の幸福な音楽の全能感

音楽がストーリーそのものに 『グレイテスト・ショーマン』の幸福な音楽の全能感

 かつて、直球にフリークスたちの姿を描いた映画が存在した。『フリークス』(1932)は、本物のフリークスの人々を起用し撮られたため、観客の多くは恐怖に慄いた。この映画は、一国では長らく公開禁止となるほどの物議を醸した。あるいは、巨匠デヴィッド・リンチはフリークスをテーマに『エレファント・マン』(1980)を撮り、著しく顔が奇形のジョン・メリックが、「見世物」となっていく半生を描いて観る者を倫理の隘路に迷わせた。

 本作『グレイテスト・ショーマン』は、フリークスたちを「見世物」にするという同様のテーマを扱いながらも、そこにおける道徳的問題を深掘りすることはしない。存在するのは、ただひたすら幸福な音楽の全能感である。圧倒的に素晴らしい音楽の前では、語ることすら無意味で、言葉は無力でしかないように思われる。本作に登場する一人ひとりの物語が丁寧に描かれることがなくとも、私たちはその歌声に耳を澄ませ、彼らが受けてきたであろう痛みや、苦しさを想像することができる。本作ではストーリーを彩るために音楽が使われるのではなく、音楽がストーリーそのものなのだ。バーナムがショービジネスの先見の明を持っていたように、監督のマイケル・グレイシーもまた、『ラ・ラ・ランド』(2016)で功績を得る何年も前に、ペンジ・パセックとジャスティン・ポールの音楽を見出した。その音楽は「ニセモノ」ではなく、本物以外のなにものでもない。たった一つのリンゴが人生を大きく変えたように、私たちの人生を大きく変えてくれる1曲が、この映画の中にはきっとある。

■児玉美月
現在、大学院修士課程で主にジェンダー映画を研究中。
好きな監督はグザヴィエ・ドラン、ペドロ・アルモドバル、フランソワ・オゾンなど。Twitter

■公開情報
『グレイテスト・ショーマン』
全国公開中
監督:マイケル・グレイシー
音楽:ジャスティン・ポール&ベンジ・パセック
出演:ヒュー・ジャックマン、ザック・エフロン、ミシェル・ウィリアムズ、レベッカ・ファーガソン、ゼンデイヤ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/greatest-showman/

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