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音楽がストーリーそのものに 『グレイテスト・ショーマン』の幸福な音楽の全能感

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 「さあ、立ち上がって」。第90回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドが、メリル・ストリープをはじめとしてそこにいる多くの女性たちをスピーチで立ち上がらせたことが記憶に新しい。そして、同じくいわゆるマイノリティと呼ばれる人々を立ち上がらせたのが、本作『グレイテスト・ショーマン』である。キアラ・セトルが劇中で力強く歌う「This Is Me」は、陰に追いやられ、愛されずに傷つけられた者たちがそれでも尊厳を失わずに進むことを鼓舞する曲だ。「これが私」というメッセージを力強く伝えるその歌詞は、本作そのものを象徴する1曲として私たちの心を強く揺さぶりかけてくる。

 くだんのアカデミー賞で作品賞を受賞した、ギレルモ・デル・トロ監督の『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)においてもまた、身体的なハンデを背負った女性がヒロインとして描かれる。同作の受賞が象徴するように、ここ最近のハリウッドでは、それまでスポットライトを浴びることのなかった者たちが主役級の役をあてがわれる映画が数多く世に送り出され、観客の支持を得ている。本作はアカデミー賞無冠でありながらも、その潮流の中核にはっきりと位置付けられる映画だと言って間違いではないだろう。

 ヒュー・ジャックマン演じるフィニアス・テイラー・バーナムは、アメリカに実在した興行師であり、のちにリングリング・ブラザーズ・アンド・バーナム・アンド・ベイリー・サーカスとなるショーの前身を築いたことでよく知られる。このサーカス団をモデルとした映画『地上最大のショウ』(1952)は、第25回アカデミー賞で見事作品賞にも輝いた。同作は、サーカス団によるアクロバティックな演技と、3人の男女の人間関係のドラマが平行して描かれる。

 一方、本作『グレイテスト・ショーマン』では、ドラマを語るプロットは極力削がれ、歌って踊る彼らの姿が中心に描かれる。本作が持つ音楽の力は相当なもので、幕が上がって「The Greatest Show」が流れはじめると、ほんの3秒で私たちを夢の世界の彼方へと連れ去ってしまう。続く「A Million Dreams」では、ミュージカル界の珠玉のスター、ジンジャー・ロジャースとフレッド・アステアを思い起こさせるチャリティ(ミシェル・ウィリアムズ)とバーナムのデュエットが繰り広げられる。

 この冒頭のシークエンスでは、幼少期から貧しい生活を強いられていたバーナムが、いかにショービジネスに至るのかを一気に描く。食べるものにも貧窮していたとき、彼にそっとリンゴを差し出してくれたのは、「ユニーク」な女性であった。この経験からインスパイアを受けたバーナムは、「フリークス」と呼ばれる異形の身体を持つ人々などを集めてショーをはじめることとなる……。

      

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