市川右團次、ピエール瀧、小籔千豊、音尾琢真……『陸王』に深みを与えるバイプレーヤーたち
映画『シン・ゴジラ』と同じ時間帯に放送を開始したにも拘わらず、視聴率は14.5%と健闘した『陸王』。第4話では、アトランティスのシューフィッター、村野尊彦(市川右團次)が、ついに会社に辞表を出し、こはぜ屋と共に歩んでいく流れが描かれた。
村野をはじめとして、このドラマは、40代、50代の魅力的なキャラクターが多い。村野の魅力は、選手たちに愛情を持って接し、そして細やかな観察力があるところではないだろうか。4話でダイワ食品陸上部の茂木(竹内涼真)のシューズの踵の減り方を見て、足の状態の変化に気づき、ダイワ食品のほかの選手の靴に小さなパッドを入れて調整するシーンなどもあった。こうした、ちょっとした変化に気づく人というのは、日曜劇場の……というよりも、池井戸潤の作品の中では、善人であることを示す。
以前の『下町ロケット』でも、吉川晃司演じる主人公・佃のライバル会社の部長が、佃の工場を訪れ、部品のひとつひとつの精巧さに気を留めるシーンがあった。それだけでこの人が、小さな部品にも作っている人の命が宿っていると理解する人間的なキャラクターであることが伺えた。
今回の『陸王』でも、そんな風に小さな技術の巧みさに気づく人たちがいるが、それとは対照的に描かれるのが、「アトランティス」の人々だ。
「アトランティス」には、選手たちをルームランナーで走らせて、そのデータを細かく採取する専門の部屋がある。このシーンのセットの作りが、あからさまで面白い。無機質な黒い壁に囲まれ、暖かみのない光が当たっている。無数のモニターには、コンピューターのデータが映し出されている。そこで口にマスクのようなものをつけて走るランナー(まるで、実験されている被験者のようにも見える)をガラスの向こうから見ているのが、支社営業部長の小原賢治(ピエール瀧)や、佐山淳司(小藪千豊)である。
データ主義で、選手ひとりひとりの体調などはおかまいなしの小原。アトランティスを辞める前の村野が小原の方針に疑問を呈すると、「変わりのシューフィッターなどいくらでもいる」と言い捨てる。人間でも、部品でも、ひとつひとつに命が宿っていて、変わりはいないとする主人公側と、データや実績があれば、どんどん乗り換えればよいとするアトランティス側との対比である。
しかし、ここまであからさまに善と悪のメタファーを使いながら描く作品では、俳優もまた、善と悪に徹さないといけない。『日本で一番悪い奴ら』や、『アウトレイジ 最終章』での悪役も記憶に新しいピエール瀧と、芸人として活躍する小藪が、悪役に徹して、視聴者からのイライラした気持ちを全て受け止めてくれているからこそ、見ているほうも物語に浸れるという部分は大きいのではないだろうか。フィクションとわかった上で、ピエール瀧、小藪コンビが、こはぜ屋陣営にどんなことを仕掛けてくるのか、ある意味楽しみにもなっている。