竹内涼真、山崎賢人、佐野岳が物語の肝に 『陸王』若手台頭に見る日曜劇場の変化

親世代と子世代を同時に描く『陸王』の新しさ

 『半沢直樹』や『下町ロケット』などのスタッフが作ったことで注目されている『陸王』。同じなのはスタッフだけではない。キャストでも『下町ロケット』に出演していた竹内涼真や佐野岳、同枠の日曜劇場『ルーズヴェルト・ゲーム』の和田正人などの俳優が、このドラマにも出演しているのだ。

 1話では、主人公・宮沢紘一(役所広司)の経営する足袋業者「こはぜ屋」が、ミシンの部品がひとつなくても成り立たないほどの繊細な技術でなりたっていること、そして足袋の市場が縮小していて、「こはぜ屋」の経営が難しくなっていること、そこにランニング・シューズという新しい市場が見えていることが、過不足なく描かれ、一気に「こはぜ屋」の人々を応援したくなる気持ちを自然と持つことができた。

 そんな中でも、前半で時間を割いて描かれたのが、竹内演じるダイワ食品の陸上部の選手・茂木と、佐野演じるアジア工業の陸上部の選手・毛塚のマラソンシーンである。

 ふたりは、箱根駅伝でデットヒートを繰り広げていたライバル同士。大学を卒業して初めての対決となるマラソンだ。茂木はもともと野球少年だったが無理な練習がたたって肘をこわし夢を絶たれたが、走ることにシフトし、箱根駅伝で注目された苦労人であり、逆に毛塚は父親もマラソン選手で英才教育を受けているということが、宮沢の息子で山崎賢人演じる大地の口から語られる。

 これに加え、ふたりはシューズメーカーであるアトランティスから、同じマラソンシューズの提供を受けている。自社の製品が注目されればそれでいいという営業担当や営業部長を小籔千豊やピエール瀧が演じているが、彼らが悪役に徹していることで、これから一波乱もふた波乱もありそうな空気が漂わせていて、続きが気になってしまう。

 しかし、二人が単なる敵対関係であるという風には描かれていない。茂木と毛塚がレース前にお互いの存在を見つめあうシーンは、ライバルという以上に、お互いに共感しあっている姿がじっくりと描かれていたし、茂木が転倒し、その横を通り過ぎるときの毛塚の表情からも、何かライバル以上のものが感じ取られた。

 それに加え、今は父の足袋屋を手伝いつつ、就職活動で連敗中の大地は、過去にサッカーをしていて怪我に悩まされたこともあり、今は茂木に対して、自分を重ね合わせて応援しているような目線を持っている。

 茂木、毛塚、大地という若い三人が、この先どう関わっていくのかが、物語の肝になることだろう。

 このことは、日曜劇場が、役所広司の世代の経営者の物語と、その息子世代の若者の姿を同時に描くという性格がより強くなるということでもある。単に、今、女性たちに人気の俳優を出せばそれでもう役目は終わったというキャスティングではなく、彼らにも焦点をあてて、物語を描こうという意図が見えてくる。

 そこには、以前にも『下町ロケット』で起用した竹内や佐野のその後の活躍によるところも大きいし、少し前時代的な性質が濃いとも受け取られかねない日曜劇場自体の変化とも受け取れそうだ。

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