市原隼人の演技はなぜ変化し続けるのか? 『無限の住人』のあくなきアプローチを読む

市原隼人、演技の引き出し拡大中!

 近年“熱い男”とタイプキャスト的に語られることが多かった市原だが、主演ではない作品では、非常に演技の引き出しの多さをみせている。しかもどんな役柄も突き詰めていくことを楽しんでいるように感じられる。そこには市原の俳優という仕事へのアプローチ方法が起因しているのではないだろうか。

 以前のインタビューで市原は「役者という職人でいたい」と発言している。前述した「ハイエナが捕食する動画をみていた」という発言も、かなり個性的なアプローチ方法だが、語っている姿は決してふざけているわけではなく、いたって真剣でありとても楽しそうだった。緊張感を持ち、どうにかして自身が演じる役をつかもうと、どんなことにでもトライする。以前は「アイデンティティを強く意識していた」というが、現在は「それを捨てられるプライドが出てきた」と柔軟性も身につけたという。

 現在放送中の『リバース』でも、熱さと繊細さと色気という、これまでの市原の演じてきた役柄を絶妙なさじ加減でハイブリッドさせ、キャラクターに深みを与えている。芸達者が集まったキャスティングだが、市原演じる谷原が、現時点では最も視聴者の心を波立たせる演技をしていると言っても過言ではないだろう。しかも役柄を楽しんでいることが、画面を通して伝わるぐらい乗っているように感じられる。

 主演を務める市原の輝きも魅力的だが、脇を固める彼の演技からは当分目が離せない。

■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■公開情報
『無限の住人』
全国公開中
出演:木村拓哉、杉咲花、福士蒼汰、市原隼人、戸田恵梨香、北村一輝、栗山千明、満島真之介、金子賢、山本陽子、市川海老蔵、田中泯、山崎努
原作:沙村広明「無限の住人」(講談社『アフタヌーン』所載)
監督:三池崇史
脚本:大石哲也
音楽:遠藤浩二
主題歌:MIYAVI「Live to Die Another Day - 存在証明 -」(UNIVERSAL MUSIC)
製作:映画「無限の住人」製作委員会
制作プロダクション:OLM
制作協力:楽映舎、東映京都撮影所
配給:ワーナー・ブラザース映画
(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会
公式サイト:http://wwws.warnerbros.co.jp/mugen/

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