『真田丸』ラストシーンに見る、三谷幸喜脚本の本質 “笑い”ではなく“人間くささ”貫く

『真田丸』に見る、三谷幸喜脚本の本質

 前述した“超高速”などの仕掛けも、単なる奇策ではなく視聴者を真田家目線にさせるための工夫であり、さらに、当時の混乱に思いをめぐらせる余白を生んでいた。最後まで「もし豊臣が勝ったら……」「家康が討ち取られるのでは?」と思っていた人が多かったのは、そんな余白を生む仕掛けが視聴者の脳内を動かし続けていたからではないか。

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『真田丸』提供=NHK

 「黙れ小童!」のリフレイン、次期大河ドラマ『おんな城主 直虎』へのさりげないエール、真田丸の完成に合わせたオープニングテーマの移動などもネットをさわがせるなど好循環を呼び、若者層の視聴者を切り拓いたという意義も大きい。再放送やBSでの放送も含め、「2016年で最も多くの視聴者を楽しませたドラマ」と言っても過言ではないだろう。

 三谷が脚本を手がけた2004年の『新選組!』のときは、翌々年の正月に『新選組!! 土方歳三 最期の一日』が放送されたが、『真田丸』はどうなのか。堺雅人自身、「九度山のスピンオフをやりたい」と語っていたように、単発特番もないとは言えない。

 ちなみに、最終回の放送が終わった今、私の頭に思い浮かんだのは、旭(秀吉の妹、家康の正室。清水ミチコ)の顔。最終回の余韻に浸りながら、なぜか「日本一の仏頂面」と言われたあの顔を思い出してしまった。こんな小技で楽しませる工夫も、現代の大河ドラマには必要なのかもしれない。

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間約20本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

■放送情報
『真田丸』
作:三谷幸喜
制作:屋敷陽太郎
演出:木村隆文
出演:堺雅人、内野聖陽、大泉洋、長澤まさみ、黒木華、木村佳乃、草刈正雄、高畑淳子ほか
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/sanadamaru/
(c)NHK

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